幸せ家族計画
□え
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「あ、いたいた」
ある日の昼休みのこと。
教室でいた忍足は、外から帰って来た不二ににこりと笑ってとある袋を手渡された。
「はい」
「…なんなん?これ」
とりあえず―長年のしつ…ごほんごほん。長年の付き合いゆえか、不二に逆らうという選択はないらしく、ひどくあっさりと―受け取りつつ、首を傾げる忍足。
それは、保冷材が入った小さな弁当袋だった。
「うん?…プレゼントだよ」
忍足からの問いかけに、にこにこ笑みを浮かべて答える不二。
そして忍足に中を開けるよう催促して。
「………スプーン?」
そして忍足がその中からスプーンを取り出した、その時。
「忍足……てめえ……!」
「ひっ…!」
教室の入り口に立ち、怒った表情でこちらを睨み付けてくるのは、友人である雲雀景。
大層整った顔のためか、余計に怒りの表情は凄みがあり、また突然の低い声にも驚いたのか、忍足は息を飲んで袋を落とした。
――床へと落ちた袋から転がり出てきたのは、綺麗に空になったよくゼリーなどの入っているカップで。
忍足は知らないが、それは景の母が作った景の好物であり、そして彼女が必死で探していた物であり――つまりは忍足は今、隣でにこにこ笑う友人からあらぬ罪を塗りつけられたわけで。
「(………ヤバイ)」
現状を理解はしておらずとも、しかし今までの経験からか、背中に流れる冷や汗。
あわててスプーンを持つ手を背中に隠してみるも、後の祭り――どころか、むしろその行動は、自分の首をしめるばかりだった。
「あーあ。だめだよ忍足、景の楽しみとっちゃ」
「な、は、お…!」
隣でさらっと罪を擦り付けてくる不二には、こういう奴だとは分かっていつつも言葉が出ない。
そうして忍足が口をパクパクさせているうちにも、景の標的は確実に忍足に決まったらしく――
「忍足…覚悟は良いだろうな?」
「ちょ…っ……え、」
冤罪だ、私は食べていない。
(その標準語が怪しいんだよ!)(ちょ、嫌違うて!)(あはは、頑張って忍足)(ひ…卑怯もんー!!)