幸せ家族計画
□お
1ページ/1ページ
「お父さあん…」
「ど、どうしたんです!?」
夏休みも後半になったある日のこと。
くじぐしと涙をぬぐいながら助けを求めてきた綱吉とリョーマに、骸は何事かとあわてて二人に駆け寄った。
「どうしたんです?話してごらんなさい」
そう言って二人の目線にあわせるように座り、優しく頭を撫でてやる骸。
「あの、ね…」
それに未だ涙を目に浮かべたリョーマが、おずおずと差し出したのは――
「……で、そうやって夏休みの宿題を親父に全部押し付けたのか?」
夏休みも後半になったある日。
高校の宿題と中学の宿題、それぞれをリビングでやっていた亮と綱吉の二人は、昔話に花を咲かせつつもしっかりと手を動かしていた。
「失礼な!得意なのはちゃんとやったよ」
「でもほとんど親父にやらせて遊びに行ったんだろうがよ」
「父さん器用にリョーマと俺が間違いそうな所はちゃんとうっかりミスもしててさー」
そう言ってケラケラと笑う綱吉に、亮はため息一つ。
そういやあの日の夜は親父、なんかリビングで頑張ってたなあなんて思いだし、それと同時にその様子をあきれたように―しかし決して止めることなく―眺めていた母の姿も思い出した。
「いやあ、あれはうまくいったなあ〜」
そして自分の宿題を見ながら「今はやっぱり出来ないかなあ」なんて言う綱吉を見て、一言。
「…恐ろしい小学生だな」
まるでそれに同意するかのように、ミンミンと鳴くセミの声がいっそう大きくなった。
お父さんにどーんと任せなさい!
(何してるんだい?)(リョーマと綱吉の宿題です)(…それは、自分でやらないと意味ないんじゃない?)