幸せ家族計画
□か
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雲雀恭弥は、自他共に認める並盛の秩序である。
それは彼が学生時代の頃から続き、昔ほど自ら町に目を光らせることはなくなったものの、「風紀財団」なんてもののトップに立った今でも、並盛で彼の名前を知らぬ者はいない。
そんな彼には、従う者も多いが敵も多かった。
何せ昔から武力行使に訴えることに対し、少しの躊躇もない彼である。
それは、至極当たり前のことであった。
そして、その悪意が彼の“弱点”に向かうこともまた――
「…これで何度目だっけ?亮兄」
「さあな。景たちの分も入れたら結構な数だろ」
薄暗い路地裏。
大通りを一歩入ったそこにいるのは、明らかに買い物帰りと見える二人の中高生と、数人の男たち。
すさんだ目をした男たちの息は荒く、いたってリラックスしている少年二人を、逃げられないようにグルリと囲んでいる。
「にしても懲りないよね」
「…そうだな」
そう言って肩をすくめた綱吉の言葉に、兄である亮は深いため息と共に答えた。
本当の本当に、懲りない大人たちばかりだ。
――はめられているとも知らないで。
「――「ねえ、」…っ!?」
男たちの中のリーダーが、なにかを言おうと口を開いたその瞬間。
しかしその後ろから冷ややかな声がその背にかかり、その男は声を発することはなかった。
それに男たちが、弾かれたように後ろを振り返れば――
「うちの息子に、何のようだい?」
そこには、トンファーをかまえた雲雀恭弥の姿があった。
「…ホント、面白いくらいにひっかかるよね」
そう言って、苦笑しながら綱吉が見る先には、楽しそうに男たちを噛み殺している母と――そして、彼によって次々と咬み殺されていく男たちの姿。
実は彼らの動向は、草壁以下雲雀の優秀な部下達によって雲雀恭弥に筒抜けだった。
そのため、綱吉と亮は母やその部下達と話し合い、あえてこの囮作戦となったわけである。
「何度目だろうなぁ、これ」
同じく苦笑しながら言った亮の言葉通り、こんなことは過去何度もあった。
しかしどの者も結局は母、恭弥によって直々に咬み殺され―ちなみにたまにではあるがそこに父である骸が混じることもあった―、そして風紀財団によってその事実は完璧に隠蔽される。
そのためまた子供たちを利用しようとする者たちは現れ、その度に男たちは恭弥によって咬み殺されるのだった。
「!」
――とそこで、亮の足元に倒れてきた一人の男。
それは、先ほどなにかを言おうと口を開いたあの男で。
そのぼこぼこにされた顔に御愁傷様、と呟き、亮は一仕事終えた母のもとへと向かった。
母さんに刃向かおうとしたおまえが馬鹿だよ。
(お腹すいたー)(今日の夕食は何だろうね)(草壁さんも食べてきます?)