幸せ家族計画
□き
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「おばあちゃんですよー」
にこぉ、と、とろけるような笑みを浮かべ、先日息子が引き取ったばかりの子供たちに向かって両手を広げてみせるのは、雲雀玲子38歳。
“おばあちゃん”と言ってはいるが、彼女が子供たちの母親だと言っても誰も疑問には思わないだろう。
いや、息子と並んで歩けば姉弟と言っても通るような見た目の彼女である。
1番上の亮や景とならば、少し歳の離れた姉弟と言っても信じる者はいるだろう。
彼女は、未だ緊張気味な子供たち1人1人の顔を見ては、にこにことそれは幸せそうに話している。
そんな彼女だからか、彼女に抱き締められているリョーマと綱吉は、恥ずかしそうではありながらも大人しく彼女の腕の中におさまっている。
初めて会った人間に、彼らがここまで気を許すことは極めてまれなことだった。
「何て言うか……さすが、玲子さんですねえ」
そんなほのぼのとした―と言うには玲子からピンクのオーラが出すぎているような気もしないでもないが―様子を見て、苦笑のような表情を浮かべる骸。
それに対し、玲子の息子である恭弥は軽く肩をすくめて答えた。
「本人いわく、子供は大の好物らしいからね。…それに、僕には子供なんて期待してなかったらしいから」
だからより一層、嬉しいんでしょと言ったあと、子供たちと話している母親の方をあきれたように眺めながらコーヒーを飲む恭弥。
つい先日引き取ったばかりの子供たちは、自分たちにあそこまで気を許すのに数日かかった。
引き取る前にも交流があったためか、初めとて別にギスギスとした雰囲気があった訳ではなく、また緊張もそれほどなかった。
しかし大人のような対応ではなく――少しでも甘えてくれるようになるまで、自分たちはもっと時間がかかったのに。
「本当に、さすがとしか言い様がないですね。…全く、どうしてあんな人からこんな無愛想な息子が生まれたのやら」
やれやれ、というようにわざとらしく隣を見た骸に、恭弥はふん、と鼻をならして。
「あそこまでを彼女以外に求めることが間違ってるよ」
僕に、ではなく、“彼女以外に”。
そう言って彼が目で示した先には――
「まさかこの歳で四人も孫ができるとは思わなかったけど、みんな本っっっっっっっ当に可愛い〜っ」
目をハートにして四人の孫たちをぎゅうぎゅうと抱き締めている玲子と、恥ずかしそうな…そして少し苦しそうな表情をした子供たち。
「…………」
そうして子供たちの(義理の)新米両親たちがコーヒー片手に生暖かい目で見守る中、散々子供たちをこねくりまわしていた彼女は四人の頬に順番に頬擦りをして。
「んもう、ホントなんて可愛いのかしら!……やっぱりあれね、」
そして彼女は、ふふふと嬉しそうに笑い。
きっと私に似たからよ。
(…いえ、血の繋がりは全くないんですけどね)(ダメだよ、聞いてないから)(……)