幸せ家族計画
□そ
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「ただいー………………ま?」
生徒会の仕事がない日は、帰宅部である綱吉は一番に帰宅する。
この日もそうだったらしく、つい最近買ったゲームをやるぞと帰って来れば、リビングにいたのは見慣れたパイナップルではなく…
「や!」
「……何でいるんですか」
そこには父と母、ついでにディーノの友人である、幸村精市の姿があった。
「何でってやだなあ、分かるでしょ?」
そう言ってコーヒーを一口。
主夫である父の姿がないところを見ると、彼は買い物に行ったらしい。
果たしてこの両親の友人は、父がいる時にやって来たのかそれとも勝手に上がり込んだのか。
まあどちらにしても、もう見慣れた光景ではあるけれど。
「また逃げて来たんですか?」
リビングに足を踏み入れ、幸村の前のソファーに座りながら問う綱吉。
目の前で微笑む彼はこれでも人気作家とやらで―綱吉も読んだことはあるが確かに面白かった―、〆切間際によく担当者さんから逃げて雲雀家へと来るのである。
とはいえ、本当にギリギリになれば姿を表し、既に書きあがった原稿を渡すのだが…たまに、本当に何も書いてない時もあるらしく。
そのため、彼の担当者はいつも血眼になって彼を探すのだ。
「まあね」
「得意気に言わないでください」
「まあまあ、君と俺との仲でしょ?」
「…真田さんに連絡しようかな」
そう言って、綱吉は自分の携帯を開く。
真田とは、幸村の担当者の名前である。
この家のことはバレていないが、しかしよくこの目の前の男を真田に引き渡しているうちに、雲雀家の全員が彼の携帯の番号とアドレスをゲットしてしまっていた。
なんとも嬉しくない限りである。
…しかも既に真田さんから着信入ってるし。
「…いい加減、真田さんで遊ぶのやめたらどうですか?」
「えーだって面白いのに」
それは分かるが―基本彼とは似た者同士らしい。あくまで周りの意見だが―しかし、毎回毎回こちらに被害が来るのはごめん被りたい。
「いっそのこと、いつもうちにいるって言おうかな…」
ポツリ、半ば本気で言った綱吉に、幸村はわざとらしく真剣な顔になり。
「こらこら、」
そんな子に育てた覚えはありません!
(育てられた覚えもありません)(…つれないなあ)