幸せ家族計画
□た
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「はい、これ」
「……?何これ」
「骸からの差し入れ」
「!!」
とある高校の、男子テニス部の部室。
そこにいた二人のうちの一人であるブン太は、その言葉に幸村の持つ紙袋を見て目を輝かせた。
幸村繋がりで先ほど名前の出た骸と知り合ったブン太は、その恩恵に預かることも度々あった。
恩恵――つまり、骸の作った様々なお菓子のことである。
餌付けをされたと言っても良いほどに、その味はしっかりとブン太の舌と頭の中にインプットされている。
そんなものを目の前に出されれば、そりゃあ目を輝かせもするだろう。
この紙袋の中身は何だろう、クッキーかドーナツか、前にもらったシフォンケーキもうまかった、なんて考えるブン太の目の前で、しかし紙袋はヒョイとその姿を消した。
「はあ!?」
煽るだけ煽っておいて―とはいえそれはブン太が勝手にあおられただけだが―何をするんだと声をあげるブン太。
しかしその非難のこもった視線もなんのその。
紙袋を体の後ろへと隠した幸村は、にっこりと思わず見とれてしまうような笑みを浮かべて。
「だってブン太、」
ダイエット中じゃなかったっけ?
(……ッ!!!)(だから俺と他の皆で責任もって食べてあげるよ。このアップルパイ)(アップルパイ…!)