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□ツンデレって最高じゃありません?
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クセになるぜ!



【ツンデレって最高じゃありません?】



「元就!」


前を歩く細い背に呼び掛けた。もちろん、その背が振り向くことはない。
あいつが普通に反応することなんてほとんどないから、逆にこれが普通だ。
どうなんだよ、それ。


「おい元就!」


駆け出して追いかけて、その肩に手を置いた。一瞬の間にバチンという音がして俺の手は宙に投げ出される。
微かな痛みを感じ始めると同時に元就がようやくこちらを向いた。
ちょっと前までむしろ向こうがベッタリだったっつーのに。


「やかましい、我に話しかけるな鬼が」

「んな言い方ねぇだろ」

「黙れ、近付くでないわ」


ふん、と前を向いて歩き出した元就に溜め息を吐く。
全く何が気に入らないのかがわからねぇ。


『チカ』


『鬼が』



もう…あの頃みてぇに呼んでくれねぇのかよ。

元就。











***










「どうしたんだい?ずいぶんしょぼくれてるねぇ」


授業に出るのも面倒で、俺は裏庭の影になる場所にいた。
寝転んで空を見上げながらまた溜め息。
そんな時にちょうど現れたのが慶次だった。


「なんでもねぇよ」


頭に浮かんだ顔を打ち消してそう言った。
どんなに悩んだってどうしようもねぇじゃねぇか。なんで嫌われたかだってわかんねぇのに…。


「なんでもなくはねぇだろう。んなくら〜い顔してさぁ。毛利のことだろ?」

「……ちげぇ」

「顔に書いてあるぜ」

「ああ!?」

「嘘嘘」

「てめぇ…!」


隣で胡座をかく慶次の胸ぐらを掴み上げる。すると途端に慶次は焦り出した。


「うわぁ、ごめんごめんって!俺が悪かったよ!」

「ちっ…」


殴る気も失せて手を離す。でかい図体が落ちていった。
なんなんだ。


「も、毛利と言えばあいつ最近なんか拗ねてるみたいだね」

「あ?拗ねてる?」

「ちょうど元親が高等部に上がった頃からだったかな」


それはちょうど、あいつが俺を邪険にするようになった頃だ。
あの頃に、何かあったか?


「入学式で元親を見た時、たまたま毛利が近くにいたんだけどさ。すごい顔してたんだよなぁ。あれから、だなぁ多分」


………。
あの、時。あの時は確か。


「……!」


思い至って、立ち上がる。
突然の行動に慶次が驚いているのを感じたが気にしちゃいられない。
そういうことか!


「じゃあな!」

「えっ、ちょ、元親!?…って、行っちゃったよ」


ま、頑張って。
慶次の声は聞こえなかった。


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