立海大 ☆ ROOM

卒業
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    卒業

 春めいた陽気に、変わりつつある日…。




  今日は、卒業式。


 一緒にいられるのは、
 今日まで…。




 2月14日バレンタインデーは、
 まんまと彼の罠に、
 はまり、チョコレートを渡した。

 好きな彼にチョコレートを
 渡せたのだから、
 嬉しいんだけど…。


 なんか、悔しい…。


 だって、今までと変わらず、
 何も進展がないまま、
 卒業式になってしまっていたから…。


 だけど、このままじゃ…。
(やっぱり、ちゃんと伝えなくちゃ…)


 卒業式後、
 人影がまばらになる校内を、
 彼を探していた。

 『まだ、帰ってないはず…』
 (もしかして…)

 廊下を足速に、
 教室に向かってた。

 そこに、彼が…。
 机に腰掛け、
 窓の外を見ていた。

 『仁王君…』
 『やっと来たか、待ってたぜよ』
 『えっ』
 『今日で、最後じき、
 どうしても、
 お前さんに言わんといかんから』
 『言わなくちゃならない事?』

 そういうと、彼は、
 私を自分の方に引き寄せ、
 キスをした。

 『…好いとよ、お前の事』
 『に、仁王君』

 彼が私にそっと手を差し出した。

 その手の中には、小さくて、
 可愛いくラッピングされた箱が…。

 『ちょっと、早いが、
  チョコのお返し』

 『私、第二ボタンが欲しい』

 そう、彼に言ったんだけど、
 彼の制服には、
 既にボタンはなかった…。

 『これか?物好きじゃのう』

 そういうと、
 制服のポケットから、
 ボタンを取り出し、
 渡してくれた。

 『これ』
 『卒業式にはつきもんじゃし、
  お前さんが欲しがると、
  思っちょったからの』
 『ありがとう』
 『じゃ、こっちはいらんか?』
 『あっ、いやそれ…』
 『嘘、これは改めて、
  14日に、渡す事にするかの』
 『意地悪…』
 『…好きよ、仁王君』
 『知っちょるよ』
『…お前さん、覚悟しんしゃい、
  俺からは、ずっと、
  卒業出来んぜよ?』
 『…うん』


 暖かな風が、
 桜の花びらと一緒に
 舞い散りながら、
 教室の窓を擦り抜けて行く…。

二人を祝福するかの様に………。



終わり。

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