HARLEM☆ROOM

□ 夏の終わりに…
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8月も後半になり
学園近くの神社で
毎年恒例の祭りが
真夏の夜を賑わしていた。

この夏祭りが始まると
もうすぐ夏が終る合図。

そして、
学生達は慌てて
残りの宿題を終わらせようと
必死になるのだ。

私もその1人なんだけど…

その前に
残り少ない夏休みを
楽しんじゃおうと
友達と夏祭りに来ていた。


神社の参道には
提灯の明かりが灯り
夜店が並び
賑わいを増している



『あれも食べようよ』

『まだ食べるの〜?』

『あっ、あれも』

『あんたね…
そんなに買って…』

友達は
私の両手に溢れた数々の品を
見ながら
呆れ顔でため息

『………ん?』

口にほうばりながら
万勉の笑みを浮かべ
友達へと振り返える

『………もう何も言うまい』

夜店の絶品を放馬る
私に一言呟いた。

『あっ、あれも〜』

『はいはい、もう好きにして
私、先に行ってるよ。
他の皆も
神社で待ってるはずだから
それ買ったら来るんだよ』

『うん、わかった』

そういうと
友達は
先に来て
待ち合わせ場所で
待ってるであろう
友達の所へ一足前に向かった。

そんな友達を見送りながら
夜店へと向かう。

『おじさん、それ1つちょうだい!』

『あいよ』

注文して
出来上がるまで待ってると
どこからか
聞き覚えのある声が聞こえてきて
数人の男子が大騒ぎで
こちらに向かってくる

『…あれは、』

彼らは、クラスメ−トを含む
同じ学園の
男子テニス部のメンバー逹だった。

ちょっとだけ、
彼らの話に聞く耳たててみる。

『ったく、
ジロ−も向日も買いすぎやな』

『いいじゃん、
跡部の奢りなんだし』

『そう、そう、
好きなのを買えって言ったじゃん』

『そういう侑士だって…』

『それにしても、
忍足さんのそれは………』

『なんや、鳳』

『まぁな、
それくわえてる、忍足ってなぁ』

『宍戸まで、なんか文句あるんか』

『………お前は変態か』

『なんや、跡部まで酷すぎやろ』

『夏の夜店と言ったらこれやろ!
チョコバナナ!』

『なぁ、侑士…』

『なんや、岳人、お前もかいな』

『チョコバナナの問題じゃなく、
侑士自体が問題なんじゃね?』

『くわえ方がな』

『意味深なんだよ』

『女の子ならまだしも』

『いやいや、
女の子がこれ食ってたら
それは、それであかんやろ?』

『でも、忍足は変態と…』

『侑士、そっち系?』

『おい、違うで』

『俺たち、襲われるんじゃね
ヤバいくね〜』

『忍足、襲うなよ』

『一応、俺は
ノーマルなんやけどなぁ
なんか、そう言われるとなぁ…』

『おい、マジで気をつけろ』

『おお…』

そこにいたメンバー全員が頷いた。

『こらこら、冗談やて
なんやそれは
もし、他の奴が聞いてたら…』

そのやり取りを見てて
ボソッと小声で呟いた。

『変態…なんだ…』

かなりの小声で呟いたつもりが、
彼らに聞こえていたらしく
こちらに振り返った。

『……………………』

『あ………………………』

『今の聞いてたんか?』

『う、うん、変態とか
全然聞いてないよ』

引きった笑顔で答えた。

『…』

しばらく
お互いに無言の沈黙の間が続く中
夜店のおじさんの一声で
沈黙が破られた。

『はい、お嬢ちゃんお待ち』

『あ、ありがとうございます』

おじさんから品物を受け取り
その場を
しらっと離れようとしたら
後ろから
がっちり肩を捕まれた。

『ちょい待ち』

『えっ』

いきなり肩を捕まれ
びっくりして
振り返った瞬間
腕の中にあった
夜店の戦利品が地面に落ちていった。

『あ゛〜私の〜』

『あ、いや、すまんなぁ
びっくりさせるつもり
あらへんかったんやけど』

『…………』

『ああ、侑士が女の子泣かした』

地面に落ちた物に視線落としたまま
その場に立ち尽くした。

(友達待たせてまで買って
せっかく楽しみにしてたのに…)
そう心の中で呟いてた。

『何、言うてんねん岳人、
人聞き悪いわ』

『おい、大丈夫か?』

『だ、大丈夫じゃない〜
私のが………』

『はぁ…ったく、
なんで
そんなに抱えて持ってんだよ、
お前は』

『だって…食べたかったんだもん』

『持てる限度あんだろうが』

『持てるもん』

『…しょうがねーな
この俺様が
好きなのを買ってやるから』

『さすが跡部、太っ腹!』
『仕方ねだろが、
忍足がやっちまったんだからな』

『お詫びと口止め料だ』

『跡部、すまんなぁ』

『忍足よ、貸しだからな』

『せっかくだから
何でも好きなのを買って
貰えよな』

『じゃ、綿菓子』

『はぁ?』

『食い物かよ』

『欲ないんやなぁ』


『何言ってんだよ、
こういう時は
もっと良いもんねだれよ、勿体ねー』

次々と皆が
ため息混じりに私に向かって呟く。

『何をねだれと?』

訳が分らないまま
きょとんとしてたら
私の耳元で彼が囁いた。

『こういう時は
俺様が欲しいとか
言うべきじゃねー?』

そう囁くと
ニャリと微笑した。

『えっ?そうなんだ、
……じゃ、イケメン彼氏?』

そう、小声で呟いてみた。


『イケメン彼氏ね、
それじゃ
俺様しかいないだろうな〜』

『何言ってんだよ』

『跡部、抜け駆けは駄目だぜ』

『俺もいるで?』

『お前は有り得ないだろう?』

『そうそう、変態だからな』

『酷いなぁ…ほんまに』

『俺もいますよ』


なんだろう。
私を無視した彼らのやり取りが
目の前で繰り広げられていた。

私の意見は……………。

そんな事は
お構い無く
いきなり
こちらに振り向き
私に向かって
彼ら全員が問い返した。

『で、誰にする?』


今年の夏の終わりは
誰かさんと
恋がはじまりそう…。

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