少年陰陽師

□第一話
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「この時刻となると、やはり誰もいないな」
昨日、貴船へ高淤に呼ばれて行った後、夜になるまでずっとそこにいた。
今は卯の刻。
明け方に近い時刻だ。
「貴船から都まで歩いていくと、時間がかかるものだな」
そう、清漣は貴船から都までの距離を歩いてきたのだ。
だが、清漣に疲れている様子はない。
本人曰く、「これくらい慣れた。伊達に長旅なんかしていない」だそうだ。
清漣の場合、それだけではないのだが。
清漣は、都を見物するかのように、あちこち見回っていた。
都に来るのは初めてなので、どんな所なのだろうかと知っておきたいからだ。
それに、清漣は好奇心旺盛なところがある。
子供みたいなところがあるのだ。
夜歩きしているのも、それが関係しているのだろう。
清漣は目の前に続く道を、ただ歩いていた。
服装は昨日と大して変わらない。
違うところは、二つだけである。
頭から衣を被っていないこと。
膝くらいまである真っ直ぐな漆黒の髪を、頭の上で一つにまとめていること。
見た目は、長身からだろうが、18歳くらい青年に見える。 
見た目と物言いからすると仕方のないことなのだが。
女扱いをされるのが嫌な清漣にとっては都合が良いのであろう。
そもそも女の一人旅は何かと危ない。
その対策でもあると思うが。
ふと、清漣は立ち止まった。
「………………?」
空を見上げ、首を回らす。
どこかで力が生じている。
清漣は気配のする方へ視線を向けた。
「……行ってみるか」
そう呟き、再び歩き始めた。

 ◆◇◆

このときはまだ、こんなことになるなんて思っていなかった。
時は、刻一刻と近づいてきている

 ◆◇◆

「急々如律令!」
その一言で、目の前にいた妖は消え去った。
辺りに元の静寂が訪れる。
「よし、これで終わりっと」
その言葉と共に、手に付いた汚れを払う。
パンパンっと乾いた音がした。
「これからもこの調子で頑張れよ、晴明の孫」
少年の足元から声が聞こえた。
そこには、白い小動物がいた。
「孫言うな、物の怪のもっくん!」
「お前ももっくん言うな」
少年はもっくんと
「もっくんはもっく・・」

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