蝶結びチョウムスビ

□***Star***
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A.Side



教団の廊下は薄暗い。


夜、まだ賑やかな内は幾つも灯されている蝋燭だって、今ではほんの数本しかない。



そんな暗闇の中に僕は居た、僕は在る。


まっくらで、皆無で、虚空で、光が絶対届かない、そんな暗闇。

きっと、これからも、僕はその暗闇にとどまるのだろう、

誰も愛せず、誰にも愛されず…











そこまで考えて、一拍、息を止める。

そして、肺が痛くなるほどに空気を吸い込み、そして、はいた。

俗に言う、ためいき。




つくづく、自分のネガティブ思考が嫌になる。


こんな戦争の中にいながら、ポジティブでいるほうがかなり難しいのだが、
あいにく僕にはその難題をこなさなければならない理由が、ある。




まだまだ髪の色が栗色だったころ。


まだまだ、左頬が傷一つなく真白かった頃。


まだまだこの戦争で兵士という重役を背負わされるなんて知らなかった頃。






僕にはこの世界で大切なものは一つしかなかった。





マナ。僕の…養父。



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