小説
□玄武高等学校‐肆
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「...それでどうした?」
足を洗う俺にタオルを渡しながら先生はそう聞いてきた。
『先生が言った通り、待ってたら父さんから電話が掛かってきたんです』
「...そうか」
『今日、春佐に電話するつもりです』
俺がそう言うと、いきなり先生は黙り出す。
「...大丈夫なのか?」
少し経つと心配そうに聞かれた。
『大丈夫もなにも、俺は春佐と向き合わないと、人をちゃんと好きになれないんです。前に進まないと...』
「...そうだな。お前には沢山の仲間がついてるんだ、頑張らず自分らしくそいつと向き合えよ」
先生は昨日もしたように、俺の頭をワシャワシャと撫でる。
『...先生って父さんみたいだ』
「....せめて兄貴にしてくれ」
俺が笑いながらそう言うと、先生は苦笑いをして言った。
『先生、名前教えて下さい』
「...黒澤 葉一郎(クロサワ ヨウイチロウ)」
『俺は与謝野秋佑』
「よ、与謝野?」
先生は、名前を聞いた途端に何かを考えるように、昨日と同じく指で机をトントンと一定のリズムを刻み始めた。
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