小説

□玄武高等学校‐肆
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『黒澤先生?』

「...すまん」

先生の名前を呼ぶと机から手を離し申し訳なさそうに謝る。

「澤さん」

『えっ?』

「生徒達からはそう呼ばれてる。お前もそう呼んだらいい」

『じゃあ俺は秋佑って呼んで下さい』

「あぁ」

『じゃあ俺教室に帰ります。本当に色々とありがとうございました』

「秋佑!」

俺はそれだけ言うと保健室から出ようとしたが、突然先生に名前を呼ばれ振り返った。

「...お前の母さんの名前はなんだ...?」

『?...紅葉(モミジ)です』

なぜだろうと思いながらも名前を言うと、澤さんは直ぐに、行っていいぞっと言ったので俺は保健室から出た。

俺はあだ名を教えて貰って仲良くなれたと、心を躍らせながら教室に戻った。

ただ、保健室の中で小さな声で俺の母の名前を呼びながら先生が泣いている事は知るはずもなかった。


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