クローバーの国

□第二章 一部 行動開始
6ページ/7ページ




大通りは人が多く、間違って踏まれそうだ。


(…どうしよう。)


困ったことに道路を横断できない。

いい手段もなく立ち往生する。


そんな時だ。



『…ブルー』

「え?」


声が聞こえた。


『…ブルーマロー。』

「…ナイトメア?」



ナイトメアの声。

彼が私を呼んでいる。


「ナイトメア。私を呼んでいるの?」

『ブルー。ああ、聞こえるか…?』



声は頭に直接響いている。

周囲をみてもナイトメアはいない。


「聞こえるから…。どうしたの?」

『ああ。君こそ、どうしてここまで来ているんだ?』

「え…」

『見たところ一人だろう?ピアスはいないようだが。』

「どうしてって…、それは…そうだけど。」

『一人は危ないだろう?十分承知しているみたいだが。』

「それは…分かっているけど。その…」


軽率な行動をしている、と責められているような気がした。

言葉が詰まり、考えはまとまらない。

彼の言うことはもっともだ。


『違うよ。そうじゃないさ…責めていない。』

「え?」

『私は君を責めたいんじゃない。ただ聞きたいだけさ。』

「えっと…。…。」


言葉にならない。言葉にできない。

どうして一人でここまで来たのか。

会いたかったから。二人に会いたかったからだ。


「…。」


突き詰めればそれだけの理由。

あまりに身勝手で軽率。

危険なのは分かっていたけれど、行動せずにはいられない。


(…ばかだ。)

反省する。

ナイトメアにその意図はないはずだけど。



『おい。私は君を責めていないぞ。』

(わかっている…)

勝手に落ち込んでいるだけだ。


『あー…違う。違うぞ?』

「…?」

『理由は分かった。君は落ち込まなくていい。』

(…ごめん。)



心が読めるのは面倒だと思う。

それに甘えている私は悪い子だ。

彼は悪くないのに、悪い気にさせてしまう。


「…ナイトメアは、どうしたの?」

『ん?』

「なんで話しかけてくれたの?」


ここにいる私に声をかけてくれた。


『君の声は大きい。よく聞こえるんだ。』

「…そうなの?」



小さくなっても、ナイトメアにはよく聞こえる『声』。



『ああ。心の声は体の大きさに関係ない。』

「…。」



こう筒抜けだと恥ずかしいものがある。

ずっと聞こえるなら、あえて聞かないで欲しい。



『いや、距離があると読めないんだ。君が近くにいるから。』

「…そうなんだ。」

いいんだか悪いんだか。

今はよく聞こえるに変わりない。



『せっかく来たんだ。こっちにこないか?』

「…え?」

『私が歓迎するぞ?』

「えーっと…」


建物の目の前だ。

道路さえ横断できれば行くことができる。



問題は、道路と階段だ。


『じゃあ、私が君を連れてこよう。』

「は?」

『簡単だよ。道路も階段も、私が君を連れてくれば済む話だ。』

「え。そう…なの?」


懸念も何もかもナイトメアには分かっている。

一瞬引っ張られて…



『ほら。着いた。』

「…え。」



頭に反響していた彼の声。

でも、耳に届いた同じ声。





目を開ければ一変していて、

気づけば目の前にナイトメアがいた。




.
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ