短編

□不真面目
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テントの中。

彼女と二人きりだ。


邪魔者はいない。




「片手で、きみの両手をまとめる事はできるよ?

 ほら、俺って男だからさ。力もあるし。」



彼女の頬に触れる。

ピクリと、彼女の肩が震えた。



「あれ?もしかして…本気にしちゃった?」

 

片手は彼女の頬を撫でる。

反対の手は、まだ何もしていない。



「あはは。冗談だよ。ほら、俺って騎士だから。

 強引に女の子に乱暴するなんて、騎士らしくないことはしないぜ?」



彼女は俺を見る。

あまり、信じてもらえないみたいだ。



疑いの目でみられている。



「…うーん。まいったなぁ。俺って、そんなに騎士らしくない?」



彼女を見つめる。



返事は、…どう返事しようか迷っているみたいだ。

目が泳いでいる。



「ひどいなぁ。…あはは。」



帽子屋さんとか、いかにも危険そうな人なら、

彼女は迷わず頷いたんだろうか。



俺は騎士。

ハートの騎士。…役割上は、ね。



「騎士らしくない、か。…うーん。」



…騎士らしくしていたつもりだったけどね。



(…まあ、そうだよね。)


考えても、仕方ないことを考える。



「じゃあ、騎士らしくないことをしようか。」



彼女の手の上に、手を重ねる。



拒絶を示される前に、



…もう、逃がさない。




END

騎士は何を考えてるんだろう。

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