短編

□さなぎ
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すぅ… すぅ…

 

安心しきった寝顔。

ここまで聞こえる寝息。



「…あれ?」



樹木に寄りかかるようにして眠っていた少女。

そんな彼女を、俺は見つけた。

 

気持ち良さそうな寝顔。

…警戒心の欠片もない。 

  

「うん。無防備以上の何者でもないよな。はは。」



笑いながら言葉を吐く、俺がいる。 

呆れているのか、それとも彼女の寝顔が可愛かったからなのか。

理由はどうでもいい。





「…本当に、無防備すぎるぜ?」



今、周りには誰もいない。

傍に近づいても起きない。



頬に触れても、反応は薄かった。



(…。)



少しの油断が命取り。

油断したら、ゲームに負けても仕方がない。



少女は起きない。





「…うん。騎士らしくない。」



柔らかくて、暖かい体。

抱き上げると、思った以上に軽かった。



…俺の負けだよ。



『手に入らないなら、奪うまでだ。』



マフィアらしい言葉。

騎士の俺には似合わないけれど。



「でも、欲しいんだよなぁ。」



手に入れたくて仕方がない。



そんな魅力を、彼女は持っている。





END

いつか蝶になる人。

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