短編
□自制
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軽い足音。
パタパタ
…駆けてくる。
そして、この部屋にもうすぐたどり着くだろう。
扉を開ける音。
軽く息を切らして、嬉しそうな顔。
微笑んで近づいてくる。
「…もうすぐ休憩に入るから。少し待っててくれないか?」
今は仕事中。
緩んでしまった口元をひきしめる。
本当なら、今すぐ抱きしめたい。
その暖かな頬に触れて、
柔らかな唇に口付けてしまいたい。
キスだけで夢中になる。
それだけで止まらなくなる。
もしも、仕事中じゃなかったら。
そうしていたと思う。
仕事中だからこそ制御できたことだ。
愚かな男の欲望を、君は知らないだろう。
守りたいのに壊したい。
全く相反したことを望んでいるのだから。
大人しくソファに座って、静かに待っている。
仕事を終えるのを待ってくれるようだ。
やさしく、包むように守りたいのに、
この腕の中で壊してしまいたい…。
暗く、溶けて沈む闇を…
君はまだ知らない。
END
大人です。