短編

□怖い話?
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夕暮れの空に変わった時、

帽子屋の門の前で双子と出会った。


「あ、お姉さんだ。いらっしゃい。」

「着てくれたんだね。お姉さんなら大歓迎だよ。」


彼らは喜び、他愛のない話を始めた。

微笑んで彼らの相手をしていると、


「あ。」

外から帰ってきたエリオットと鉢合わせた。

「エリオット、お帰りなさい。」


彼には珍しく、私の訪問を喜んだ様子ではなかった。


どうかしたのかと近づいた。

「…いや、別に。何にもないんだ。」

「でも。」


バツが悪そうに視線を逸らされ、

私は何事かと不安になる。


「まさか、あんたがいるとは思わなくって。

 ちょっと驚いただけだ。」

エリオットは苦く笑っていた。

…うそだ。

何か隠している。

そう思ったが何か言おうとは思わなかった。

なんとなく立ち入らせたくない空気が伝わってくる。

エリオットは慎重に言葉を選んでいるため、

おとなしく引き下がる。

「わかったわ。」


残念だったが、無茶なことを言う気はない。

帰る旨を告げると双子が残念そうに見送ってくれた。

エリオットは少しホッとしたようだ。


(…なんなのかしら。)


夕刻の屋敷前を横切り、街の通りに戻る。

時計塔を通る時に赤い色が近づいてきた。

空も地面も赤かったので、一瞬見過ごす。


「やあ、君がここにいるなんてね。どこかの帰り?」

「エース。」


気軽に声をかけられ、そこで立ち話をする。

いかにも騎士らしく見える男。

だが、私には彼が表面しか触れられない。



帽子屋屋敷からの帰りだと告げると、彼は「へえ」と一言。

今度は私が、なぜここにいるのか理由を尋ねると

「あ、そういえばペーターさんが探してたぜ?」

話を聞いていないように話題を変えられた。

「早く帰らないとな。ペーターさんが心配してるし。」


今日はおかしい。

エースまで私を帰らそうとする。

いつもなら一緒に旅をしようといち早く行動する男なのだが。


「え?」

ふと目の前に彼の顔があった。

キスされるわけでもなく、首元に顔の位置。

そして、背中に腕の感触があった。


「なに?」

地から足が離れ、彼の腕の中にいた。


「うわっ。危ないなぁ…」


気づくとエースに抱えられていた。




甲高い銃撃音と金属音。

どうやら撃たれているらしい。


広場の隅に下ろされ、エースは振り向かないまま。


「じゃあな、アリス。」


そのまま彼は去ってしまった。

残されて少し呆然とする。

でも、そのまま城に戻ることにした。





あの後、広場は騒がしくなった。


街を通り過ぎた時に夜。

城に着いた時に昼に変わった。




長い距離歩いたので疲れた。

部屋で寝ようと思ったが、今は昼だ。


どうしよう…。

そこに、ペーターが血相を変えて飛んできた。



「アリス!どうしたんですか!!」

「は?」

第一声のそれが意味不明だ。

彼はすぐ私を抱いて城に入った。

途中、もがいて下ろすように喚いたが、

「ダメです!!」の一点張り。

着いた部屋は自分の部屋ではなく、医務室のような場所。

さすがにここまで来て、普通じゃないと理解した。

「…な、なに?」


怪我なんてしていない。

なのにペーターは聞いてくれない。

メイドさんも焦っている。

理解できず、目の前に消毒薬や包帯を準備された。

(…な、なんで?)

焦り、汗が出た。



私の服に手をかけたメイドさん。

服を脱ぐのだ。

違う意味で、冷や汗が尋常じゃなかった。


「ちょっと待って!」

「あらあら。」

さすがにペーターは追い出してもらった。







服を脱がされたので、仕方がない。

医務室だが、怪我一つしていないことを主張する。


「…だから、何もないでしょう?」


メイドさんも確認し、そうですねと頷いた。

しかし、言いにくそうに服を見つめ、


「ですが…その。」


脱がせた私の服を、広げた。



今度は私が驚く番だ。

ざわりと背筋が寒くなる。



背中、袖に集中的についた汚れ。

スカートのすそも、靴下も。

確認してみれば同じ汚れがついている。


「…なにこれ。」

嫌なことを聞いたと思う。

メイドさんは困ったように沈黙したあと、


「多分、血です。」


くらりと眩暈がした。















余談になるけれど。


服の血は、多分エースについていたものだ。

抱かれた時に着いた血。

それが乾かないうちについた。


つまり、エースは血が乾かないうちに人を刺している。

赤色の地面。

今思えば、それが血だったのかもしれない。


エリオットの反応。

仕事の帰りだったのか、これから仕事なのか。

帰るように促されたのは、偶然なのか。

エースが迎え撃ったのは誰なのか。






見えそうで見えない世界。

抗争。


彼らが私に見せないようにしたもの。


そう思うと

ぞっとしたものだ。




END

ホラー小説の書き方。

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