短編

□おまけ
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コンコン…

軽く叩かれたノック音。


コンコンと2回続き、

間をおいてコンコンと叩かれた。


(…?)

誰だろう。

不思議に思いつつ、無視を決め込む。


今は読書中だ。

誰であっても文字から目をそらしたくない。

続きが気になる。



かちゃ

「…あのさ。いるんなら返事してよ。」

『…い、いません。』

何で、入ってくるんだろう?

返事してみる。


「そうじゃなくってさ。」

チャリチャリ…

鎖の音が鳴る。

ボリスが隣に歩み寄ってきた。



「本に夢中なの?」

猫だ。

猫が擦り寄ってきた。


…そう思わないと集中できない。

猫特有のやわらかい毛。

その毛が、ピンクのファーが頬に触れる。


『…っ。』


私は続きが読みたい。

読みたいんだ…けど。


『ちょっと…ボリス。』

なにしてくるんですか?

くすぐったいんです。

続き読みたいんです。

擦り寄ってきても困るんですってば。


「んー?」

猫はごろごろと私の膝に甘えている。

肩からずり落ちるように下がってきて、最後は膝にもたれてきたのだ。

上からのってきた重さで、私の太ももは占領された。

このピンクの髪に。


『…。』

「…。」

見つめているわけじゃない。

でも空気で分かってしまう。

お互いが、お互いの気配を探っている。

空気がピンと張る感じだ。


『…。』

「…。」


するりと伸びた腕が腰に回される。

そして、きゅっと細められて


「…。」

なんとも言えない可愛さ。

そのすねた感じに、根負けした。



『よしよし…』

頭をなでる。

猫だ。

のどを鳴らして気持ちよさそう。



カチャ

ドアの音。


『え?』

ノックもなしに、誰かが入ってきた。


「お姉さん、ボリス。なにやってるの?」

「僕ら、仕事で仕方なく遅れてきたんだけど。」

双子だ。

ブラッディツインズ。

今は、赤くないのでホッとする。


「えー。お前ら、今来たの?タイミング悪いんだって。」

「そんなの僕らに関係ないよ。」



やっぱりクールでドライなのか。

態度が冷静です。

こんな状況で。


「…お姉さん。ボリスといちゃついてたの?」

と思ってたら、一気に雲行きが怪しくなりました。

…ダム、そんな発言はいらないよ。


『…えーっと。』

いちゃついて…ましたか?

確かに一瞬そう見えないこともないけど。

私、頭撫でていましたし。

あ、ボリスの腕が腰に回ってたからかな?


「お前らもすればいいじゃん。」

そしてボリスが爆弾投下。



「そっか。いいね、それ。」

「僕らも、お姉さんを抱きしめたいな。」


いやいや遠慮するからさ。

そんなものいらんよ?


だから斧を持ってこないでって。


『ひぃぃ』


か細い声で悲鳴。

双子は無視して左右から抱きついてくる。

案の定、斧つきで。



コン、 カチャ…

ノック音の後、すぐに扉が開いた。


今度は誰だ?


「おじょうさん、…何してるんだ?」


ブラッド様、光臨です。

そして、そのままこちらに来てくれた。

怪訝そうな表情。

当たり前かもしれない。



左右に双子。

膝にボリス。

こんな状況では、なぞ過ぎる。


『…た、助けて?』


四肢、自由じゃないです。

全く不自由です。

この拘束を解いてください。


「…ふむ。」


ブラッド、なんか考えてるし。


「お姉さん、顔赤いよ?」

「うんうん、可愛いね。」

「あんた、顔真っ赤。…恥ずかしいの?」


そこ、笑わないでください。

そこの三人。


誰のせいだと思ってるのよ。


「お嬢さん?」


また何するんだか。


「おいで。」

『は…い??』

正直驚いた。

本当に助けてくれたよ、この人が。


「お前達、ちょっとお嬢さんから離れろ。」

双子はしぶしぶ従った。

ボリスは嫌そうだったけれど、最後に離れた。

開放された体。

軽い…


ホッと息をつけば、

今度は


「こっちだ。」


体を引き寄せられる。

自然に香るバラの匂い。

クラリとくる。


「帽子屋。お前、本当いいとこ取るな?」


横から声。

…ゴーランド?


「おい、大丈夫か?」


頭に手がおかれる。

そのまま優しくなでてくれた。


ゴーランドは、まだ無害だ。

音楽をしなければ。


癒される。


なんだかいい気持ち。

うっとりとしていると


(…?)


ふと気がついた。


あれ?

なんでゴーランドがいるの?



「俺? まあ、成り行きで。」


どうやら、ブラッドの存在感で見え(ry

まあ、状況は妙な感じなのは、変わらず。



ブラッドに抱きしめられ、

ゴーランドには頭を撫でられ…


「僕らも入る。」

「手は空いてるでしょ?」


双子から手を握られ、


「俺は腕、もーらい。」


ボリスからは腕にキスされてる。


なんですか? これ。

ちょっと収集付かないんですけど。



驚きつつも、芯は冷静だ。

明らかにハーレム状態だ。


何だこれ?

通常ならありえない。



まあ、

嬉しいけど、ね。



甘んじて受け入れる。



それはほんのりと優しい。

そして、カオスな状況なのでした。




END

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