□LOVE イズ HONEY
1ページ/10ページ

都内の一等地に立つ高層ビルを見上げる影。
「…」
ゆっくり息を吸うと扉をくぐるーーーーーー


「社長、コチラを」
「ああ、有難うございます」
真生が手渡したのは幾つかの経済誌。
それを受け取り峯明は1つずつ決まった場所に目を通す。
「真生はコレを見ましたか?」
「はい。でも…」
微笑み、クスクスと笑う。
「江流ったら、どれも面倒臭そう」
「あの子はこういうのが好きではないですからねえ」
「大霜寺グループを担う方ともなれば、注目されるのも無理はありませんわね」
幼い頃
1つの『想い』を遂げる為に大きな世界へと見を投じた少年。
金糸の髪、紫紺の瞳が印象的な麗しい幼馴染。
少女の頃は頻繁に会えていたが
大人になるにつれ難しくなっていた。
峯明の後継者として日夜世界を飛び回らなければならないのだから致し方ないとはいえ
(江流…どうしてるかな)
雑誌の中の姿を見ては思いを馳せる。
「2人ともすっかり大人になってしまって」
「うふふ、少しは成長してますか?」
「真生は益々愛らしくなりましたしね」
目の前に立つかつての少女を眩しそうに眺める。
真生は幼い頃のまま成長したような
ふわりと揺れる茶色のボブの髪
白い肌
手足の細さは相変わらずだが、女性らしい身体の線が浮かぶ。
麗人ではあるのだが、その容姿は愛らしさの方が際立つ。
「ウチの男性社員が落ち着かない筈です。
こんな可愛らしい秘書が同じ会社にいたのではね」
「私がですか?」
「おや、自覚がないですか?」
きょとんとして問うてくる真生に峯明も目を丸くする。
これは
(江流の苦労も…頷けますね)
帰る度に彼女の周りを気にかけ
頭痛を押さえる息子の姿を思い浮かべて思わず笑みが溢れる。
「まさか貴女が私の会社に…しかも社長専属秘書として勤めることになるとまでは考えてませんでした」
真生が両親を亡くして彼女を引き取り、育てて幾月も流れ
大人になり自分の世界で生きれる可能性を得た時、飛び立ってしまっても見守ろうと決めていた。
だが、真生が選んだ道は峯明の元で仕事をする事であった。
コネクションに頼らず、皆と同じ順序を辿り峯明も知らない内に決まっていたのだ。
恩を返したい。
最初、彼女は給与すら受け取ろうとしなかった。
『恩を感じるのであれば、収入を得て自らの力で日々を送って欲しい』、そう言う事でやっと受け取ったのだった。
真生の力で今の場所に立っている事実は育ての親として嬉しい事。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ