□初恋
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初めて君をみたその日から

僕の中の光は君1人






「悟浄、買物について来てもらえる?」
「あ?三蔵に頼めば?」
「玄奘、村の人達に説法せがまれちゃったみたいで」
「へえ、あのサンゾーサマがね…」
宿の食堂で煙草でくつろぐ悟浄に真明が声をかける。
八戒と悟空は先に買物に出かけ
鶺鴒は情報収集に出てしまっている。
まったく
(…人の気も知らないで)
彼女を残していくなど
「オッケー。悟浄サンとデートしてもらおうかな♡」
「まあ、うふふ」
煙草を消し、微笑んで立ち上がる悟浄に鈴を転がすような可愛らしい笑い声で真明が微笑み返す。
「有難う、悟浄」
フワリと肩までの髪を揺らして行きましょと扉へ向かう。
その仕草一つ一つ
(可愛すぎか)
胸の芯を掴まれるように温かくも切ない思いが悟浄を支配したとしても
彼女は既に他の男のもの。

初めて彼女に会った時
白い肌 光を灯した茶色の瞳
同じ色の髪
出で立ちは三蔵法師ながらも
その無垢な姿は際立って見えた

一瞬で身体を貫かれたような感覚。
だが
欲しいと思っても叶わない人
彼女はーーーーー
「なあ、真明」
「何?」
「三蔵ってガキん時からあんな感じなの?」
「うーん…そうね」
口元に法衣の袖を当て宙を見て考える。
「子供の時はもっとストレートだったかな…
大人になって言葉を選ぶようになったってのもあるかも知れないけど」
幼馴染の話をする時…
(まー…嬉しそうな顔しちゃって)
それもまた可愛いと思ってしまう自分。
コレは完全に病ーーーーー
「やっぱり…『男の子』って感じだったけど『男の人』になったってのが1番大きいかな」
「そりゃあ向こうも同じ事思ってるっしょ」
「…そうなのかな…」
「あら?何の心配?」
曖昧な表情をのぞき込むと、それに気づき気丈に振舞う。
「うん、やっぱり…私も変わっちゃってると思うのね。
ガッカリされてないかなー…って」
「あー、それは無い」
「そう?」
「逆だろうなー多分。
幼馴染が急にスゲーいい女に見えて、どうしていいのかわかんねーじゃねえかな」
「悟浄がそう言ってくれると安心する」
「えー、俺『良い人』どまり」
真明の買物した荷物を持ってやりながら、階段に差し掛かり、手を伸ばす。
「お手をどうぞ。お姫様」
「ありがとう」
フワッと白い手が重なる。
(この手を…)
このまま、攫ってしまえたらなんてーーーー
でもそれは本意では無く
彼女の本意でもない
独りよがりの想い
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