□joy
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「三蔵が風邪?!」
「ええ」
驚く一同に鶺鴒が神妙な面持ちで頷く。
「恐らくこの前あのバカ妖怪の幻覚で海に落ちた時に冷やされたのではないかと思いますわ」
「バカ妖怪って…」
「鶺鴒さんのバカは雀呂の事ですねきっと」
「真明は大丈夫なワケ?」
「ええ。多分私に法衣を貸してくれたのも原因なのよね…」
「感染るといけませんので、しばらくお部屋は分けられるのがよろしいかと…」
「でも…」
「じゃあ真明は俺と一緒で♡」
「あっ…えっ…悟浄?!」
真明の腰を悟浄が引き寄せた
瞬間

スパーン!!

「ったあ!!」
「この的確なハリセンスクロールは…!」
「…てめぇら…人が弱ってると思っていい気に…っ」
「あ、主!」
「「「三蔵!!」」」
「玄奘!!」
後頭部を押さえる悟浄を始め驚く一同と
「…っ」
「あっ、大丈夫?」
熱の為ふらつく三蔵の身体を真明は支える。
「好き勝手…させるか」
しっかりと真明を抱き締めるその腕は
(…凄い熱)
熱の為熱い。
みるみるうちに真明の心配を煽り
「…やっぱり私が看病するわ」
「真明様?!」
「子供の頃からこういう時は私が看病してきたし、玄奘はこうなるといつもにも増して偏食だから…」
「鶺鴒さん、真明はこうなると聞きませんし」
「そうですね…では、私もお手伝いは致しますから」
「有難う。
玄奘、部屋へ戻りましょう」
「真生…」
荒い息の中、呼ばれる名。
こんな時はいつもーーーーーーー
「…江流…大丈夫よ」
金糸の髪を優しく撫で、抱き締め返す。
ゆっくりと双眸が閉じられ
高熱の為に一気に脱力する。
「三蔵?!」
「気を失っただけよ…でも流石に運べないわね」
「しゃーねえな。悟浄サンが運びましょ」
「悟浄、有難う…」
悟浄が三蔵の身体を受け取ると肩に担ぎ、部屋へ上がって行く。
「後で冷やす物を持って行きますね」
「八戒、宿の延泊もお願い」
「分かりました」
「真明…オレ…」
「悟空、後で林檎と…黒砂糖を買ってきてくれる?」
「うん」
「すぐにいつもの玄奘に戻るわよ」
不安そうな悟空の頬を包み
真明はニッコリと笑ってみせた。



『江流、起きてはダメですよ』
『ですが…お師匠様』
『風邪は寝るのが1番の薬です』
床で起き上がる江流を見つけ、光明三蔵法師はたしなめ横になるように促す。
昨日より出た高熱は若干落ち着いたものの
まだ下がり切ってはいない。
『…今日は』
『真生が来る日だからですね?』
『…芙蓉を』
『芙蓉?』
『芙蓉の花を見せると…約束してて』
『真生に感染しては大変ですから』
『…はい』
『私が真生に伝えますよ』
額に置かれる冷やした布
優しい手
安堵の呼吸をして江流の瞼はゆるゆると閉じた。
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