□BUTTERFLY
1ページ/4ページ

旅の途中で迎える新年。
立寄った街の新年の賑わいに誘われて一行も色とりどりの屋台を見て回る。
「装束の新調が間に合ってよかったですね」
「本当に」
各々新年を迎える為に八戒と鶺鴒は全員の装束一式の新調を進めたのだ。
「あ、三蔵!肉まんー」
「さっき団子を食っただろうが」
「だってまだ足りねえし、真明にも食べさせたいんだ」
「だったら来てから買えばいいだろう」
真明は三仏神の謁見の要請を受けて近くの寺院で急遽謁見を行って来る事になっていた。
「だけどよ、ちょっと遅いんじゃねーか?」
「新年のご挨拶ですから、少し時間がかかってるんでしょうね」
「三蔵じゃテキトーにしそうだもんな!」
「てめぇら、勝手な事言いやがって…鶺鴒」
「はい」
「翔んで様子を見て来い」
「御意」
三蔵に一礼し、鶺鴒は鸚哥の姿に変化して冬の空を寺院に向かって飛んでいく。
残された男4人はそれを見送り
「ヤロー4人の初詣か…一気に華が無くなったな」
「フン、元々はこの人数だっただろう」
「そーいやすっかり忘れてた」
「真明と鶺鴒さんがいるのが当たり前になってましたね」
ゾロゾロと再び屋台を見ながら歩き出す。
そんな中、思い出したように悟空が疑問を口にする。
「そういや、真明の新しい法衣ってどんなの??」
「朝起きたらもう三仏神の謁見に行ってたから俺もしらねーわ。
八戒は知ってんの?」
「真明のものは鶺鴒さんが担当したので僕も今日初めて見るんですよ」
「ま、俺らのお姫様はベースが良いからな。相当可愛いとは思うけど。
サンゾーサマも知らねーの?」
「さあな」
「楽しみだな!なあ、三蔵!」
ウキウキとした表情で悟空は真明に飴を買ってくると屋台に走っていく。
「僕も今の内に足りない物を買いたしておきましょうかね。
悟浄、荷物お願いします」
「へいへい」
八戒と悟浄も用事を済ませに行動をはじめ
「…」
ふと三蔵の足はある屋台の前で止まる。

それはーーーーーーー

寺院にも新しい年は訪れ
静かな空間には僧達の読経の声のみが響く。
年端の行かない子供達はその声の中、新年の準備を進める。
江流は街から献上された品を検品していた。
(この辺は明日の行事に必要で…
…あれ?)
献上の箱の隙間から寺院では見慣れないものが落ちてきた。
『…』
シャラ…と綺麗な音を立て、キラキラと光る金の細工がされている。
『江流、どうしましたか?』
『お師匠様、箱にこのようなものが』
『おや』
様子を見に現れた光明三蔵法師へ江流は見慣れないものを差し出す。
それを受け取り光明三蔵法師は
『他の荷が紛れてしまったんでしょうね』
『それは…』
『これは簪ですよ』
『簪…ですか?』
『坊主ばかりのこの寺院には縁の無いものですね。
女性が髪に差して着飾る時に使うんです』
『なる程』
確かに縁がない。
だが
(真生も…使うのかな)
江流の脳裏には1人の少女が浮かんだ。
それを見透かしたように光明三蔵法師がニヤリと彼を覗き込む。
『真生にはまだちょっと早いですかねぇ』
『うっ』
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ