□#9nine
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それはいつものような旅の途中。
「えーと…もう血止めが無かったんだっけ」
休憩に止まった草原で真明が薬草を探し当てる。
「あったあった」
微笑み集めた薬草を眺める。
「結構あったなぁ…あら?」
目の前に咲く白い花。
(見た事ない形…西の花かな…?)
歩み寄りそっと摘もうとするがーーーー

「ダメ!!」

黒い影に手を弾かれる。
「痛っ…誰??」
「その花は毒草です。触れば皮膚が溶けてしまいますよ!」
「あ…」
真明の手を弾いたのは黒い髪を上で結い上げた女性。
(キレイな人…)
「あの…有り難うございます…」
「私の方こそ…急な事でつい…手を見せてください」
そっと真明の手を取り手当を始める女性。
そんな彼女をじっと見つめる。
尖った耳が何者かを物語る。
(あ、妖怪なんだ…)
「あの…何か?」
「あ、えっと…貴女は自我を保ってるのね」
「ええ…貴女は…」
「私は見ての通り法師様」
真明は袖の裾を持って悪戯っぽく笑う。
「でも皆に見えないって言われちゃうの」
「まあ…ふふっ」
「おかしいなぁ…ちゃんと念仏とか経典読んだりも出来るのよ?」
「それは…貴女が愛らしいからですわ」
「もっと…頼ってくれていいのになー…」
「…」
眉を下げて薬草を選り分ける様を女性は見つめる。
「私ね…幼馴染と旅をしてるの」
「…」
「いつも私の事を案じてくれてるの、分かるの。
でも…私だって支えたいのに…」
「…」
「そんなに…頼りないのかな…?」
「…そのお気持ち…分かります…」
女性も同じように手元の薬草を寄りながら少し哀しみを滲ませる。
「私には主がおります。
いつも優しく部下にも信が厚くて
でも、いつも1人で守ろうとするのです。
もっと部下の…私達を頼ってくれていいのに…」
「何だか…私達一緒ね」
クスクスと真明が小さく笑い声を上げるとつられるように女性も笑った。
「本当ですね」
「ねえ…私の名前は真明っていうの。
貴女の名前、聞いてもいいかしら?」
「真明様…私は…」
「おや?八百鼡さんじゃないですか」
「「八戒さん」」
不意に後からかかった声に彼女ーーーー八百鼡と真明は同時に驚いた声を上げる。
「こんな所で何をしてるんですか?」
「薬草を摘みに来たんです。八戒さんは?」
「僕は真明さんを迎えに来たんです。
姿が見えないと三蔵が挙動不審なんで」
「八戒さん、私の事は真明と…」
「では、僕の事も八戒って呼んでくださいね」
「む、難しいわ…」
「慣れですよー。さん、ハイッ」
「は…八戒」
「その調子ですよ、真明」
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