□DEAR MINE
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天界に戻った観世音菩薩は何か思う様に椅子に肘を付き一点を見つめていた。

蓮の水鏡の中

三蔵一行の姿が映っている。

「やはり…眠り姫になってしまったか…」

眠る真明の姿が映しだされる。
反魂の力の反動だろう。
彼女自身の魂が身体の奥深くに沈み込んでしまっているのだ。
「流石に…オレが手出しできるトコロじゃねーな…」
(どうする…?金蝉…)

「観世音…妾に行かせてくれぬか?」
椅子の後ろより姿を現すものがある。
「構わねぇが会話は出来ないぞ?」
「分かっておる…アレでは出来まいしな…」
そっと水鏡の中を見る目が細められ、銀色の長い髪を翻す。
「おい、月天心」
不意に観世音菩薩に名を呼ばれ、天女ーーー月天心は振り返る。

パシッ

「持って行け。一応力はセーブしてもらうぜ。
…って言ってもお前の場合聞かないだろうが、な」
「…フン」
投げられた耳飾りを身につけ、金色の双眸が余裕を見せて微笑んだ。
「一応、聞いといてやる」








あれからもうどのくらいの日が経ったのだろう。
「…」
「悟空…」
眠り続ける真明の側から離れず悟空は寝食もとっている。
(あの…)
元気な姿が印象的で、食べる事が好きな悟空が…
鶺鴒はそっと横に座り八戒から貰ってきた饅頭を2つに割る。
「悟空、はい」
「ん、サンキュな」
「ねえ…
もしかして守れなかったって思ってる?」
「…うん、格好悪ぃ」
「…」
「三蔵は?」
「さっき見てきたよ。
…何か考えてるみたいだった」
「…そっか」
「もしかしたら…」
「ん?」
手の中の饅頭に目を落とし、鶺鴒は少し迷ったように黙ったが
「玄奘三蔵法師は真明様の力の開放を考えているのかも…」
「…っ?!」
「共有できれば弱った魂の反魂も出来るわ。
…ましてや玄奘三蔵法師ほどの力がベースなら尚更ね」
「でも…それじゃあ2人の気持はどうなるんだよ…」
「…それに悩んでるんだと…思う」
悟空と鶺鴒は悲しそうに真明を見守る。
悟空達が駆けつけた時
そこには反魂されたばかりの三蔵と
その場に倒れ込む真明の姿があった。
あの時、三蔵は真明を誰にも触れさせようとせず
悔しそうに彼女を抱き締め名を呼び続けていた。
(あんな三蔵…見た事ない)
あんな切なそうな顔はーーーーー
「1番守れなかったって思ってるのはきっとあの人ね」
「…うん」
「違うのにね」
「鶺鴒?」
不思議そうに見つめてきた悟空に鶺鴒は悲しい笑顔を浮かべる。
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