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更に西へと鉄の車は走る。

「…ここは」
目の前に広がったのは、枯れ果てた街ーーー
「人は…いないんでしょうか…」
「こりゃあ、もしかしなくてもまた野宿?」
「オレもうハラ減って限界…」
車を降り立ち辺りを見る真明に一同は続く。
「…妖怪に襲われたのでしょうか…」
「恐らくな…鶺鴒、翔べ」
「はい」
鶺鴒に三蔵は偵察を指示する。
一礼した鶺鴒は鳥に姿を変えると一気に飛翔した。
「なぁ、鶺鴒チャンは三蔵の言う事も聞くわけ?」
ちょんちょんと真明の肩をつついて悟浄が尋ねる。
「多分、玄奘の事は認めてるわ」
「初めて会った時はエラい敵視されたけど…変わるもんだな」
「玄奘も認めてるのよ。だからね」
「真明もキレイになったぜ?」
「まあ、悟浄ったら口説いてるの?」
「ホントだって。『女』になった途端、スゲー色気出てきたなー
…今夜辺り、俺と…」

ガウンッ…!!

「…やってみろ。『紋』の力で消滅したいのならな」
「その前に殺しにかかってるじゃねーか!」
「警告ってヤツだ」
「いや、絶対当てにかかってた…今のは」
「なあ、三蔵ーハラ減ったー」
「草でも食ってろバカ猿」
「何だよおー…ん?」
しゃがみこんだ悟空の目が何かを捉える。
「悟空?」
「真明…あれ」
「…」
指差した先を茶色の視線が追う。
その先にはーーーーーー
「貴女様に…『光』の匂いを感じました…」
歳の頃は悟空や鶺鴒と同じ位だろうか。
白い長い髪を結い、瑪瑙のように紅い瞳が印象的な
「…貴女、妖怪なの?」
「…はい…」
佇む女性の耳は尖っており、耳飾りが揺れる。
「貴女様のお姿…もしや、真光三蔵法師様の娘様ではございませんか?」
「!!どうして…父様を」
「ああ…やはりそうでございましたか。
よく似ておられる…」
真明を見つめ、懐かしそうに細められる目。
「真光三蔵法師様は…私の恩人にございますれば」
「って事は…オネーサン幾つ?」
「見た目は悟空と同じ位なんですが…」
真明を両脇を守るように悟浄と八戒が並ぶ。
『真明様』
「鶺鴒、お帰りなさい」
鶺鴒が大きく旋回しそのまま主の肩に降り立った。
『妙でございます…気配は無くも、存在はする…
"街"として機能はしているようです』
「…もしかして」
「『追憶』の街、か」
「三蔵、なにそれ?」
「この街はとうの昔に滅んでる」
「え?でも鶺鴒チャン街だって」
「滅んだ…だが、成し遂げたい事がある」
「それを遂げる時を待ち続けた…街」
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