□はじまりの朝
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「いいのかー?真生、苺凄く好きなんだろー?」
「いいです。江流にあげます」
「気に入られちゃったな、江流」
「へっ?あ…」
「おやおや、羨ましいですねえ…江流」
「…そんな貰えなくて残念そうな顔しないで下さい、父上」
大人2人にニヤニヤと笑われ
初めての異性からの行動とも言える出来事に江流はあからさまに戸惑いの色を見せる。
そんな中、苺を差し出す本人は
「江流、あーんです」
と更に困らせてきて
(こ、この状況…どうしろと??)
ぐるぐると混乱の2文字が頭をかけ巡る。
自分の方が大人びているのか
彼女が幼いのか
無垢な存在はちょこんと江流の膝の上まで進出してきて
「ーーーーーー!!!」
一気に体温が上がるのを自覚してしまう。
「おおー、我が娘ながら大胆だ」
「ああ、私も真生を膝の上に乗せたいです」
「いや、あの、2人して見てないで、止めてくださいよ」
しどろもどろになりながら助けを求めるが
「…」
苺の刺さったフォークを片手に真生はそのまま少年の膝の上でもう片方の小さな白い手を彼の髪に伸ばす。
さらりと金の髪に触れ
じっと紫の瞳を覗き込む。
「ーーーーっ」
距離が
(半端無く…近いだろ…これっ)
かと言って意識の中で少女を嫌がる訳ではなく
その身体がずり落ちてしまわないようにそっと手を添えている訳だが
さくらんぼを思わせるような少女の唇が目の前にあり
変に意識をしてしまい鼓動が早くなる。
こんなに意識をするのは
(俺はーーーー)
「…っ、真生…」
「キレイ」
「え…」
急に放たれる言葉。
呆気に取られた江流に
ふわりと愛らしい笑顔が降り注ぐ。
「ーーーーー」
(可愛い…)
素直に心に浮かんだ気持ち。
「江流の髪も目も、とってもキレイね」
「あ…」
「江流、ぽかぽかのお日様みたい」
「お日…様…」
実の親の顔も知らない
養父に引き取られた後も
決して温もりに甘えてはいけないと
己を律して生きてきた自分が
(太陽…?)
「ふふ、見抜かれてますよ江流」
「父上…」
「貴方は普段から己に厳しく、人に優しい子ですからね。
…もう少し、子供らしくても良いのです」
「…」
「少なくとも、この真生と過ごしている僅かな瞬間で貴方は少年らしい反応をしてますからねえ。
いやあ、コレは父として嬉しい事です」
「な…っ!!これは…っ、不可抗力で…!!」
「照れなくてもいいんですよー。
真生は可愛いでしょう?」
「…っっ!!からかわないで下さい…っ」
「江流ー安心しろ。そいつの許嫁はまだ決まってないから」
「真垓様…!そういう事ではなくてですね」
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