□DEAR MINE
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「『そこに何もない』くらい、強い力で守ったのに」
「何も…ない?」
「ええ。
あの時の玄奘三蔵法師は幼馴染だからとか、師から託されたからとか…そういうのじゃなかったなって」
「…」
「だからこそ、真明様は助かったんだわ」
「真明…」
2人の視線は再び真明に向けられる。

「真明…今『何処に』いるんだよ…」


「三蔵、吸いすぎですよ」
「…」
煙草の吸殻の量は彼の苛立ちに比例する。
八戒は息をついて片付けに取り掛かる。
きっと、どうしようもやり場の無い気持ちを持て余している
それが分かるのでそれ以上は言わない。言えない。
「八戒」
「…はい」
不意に名前を呼ばれ手を止めて三蔵に向き直る。
紫紺の瞳は伏目がちに続ける。
「真明の…力の開放を行う」
「!!本気…ですか?」
「ああ」
「戻れないかも…しれませんよ…?」
「俺が狂うかもしれん」
「ーーーーーー」
「その時は八戒…
お前が俺を殺せ」
「それは…」
八戒には2つの意味が込められてると思えた。
1つは心身的に得る莫大な力に異常をきたすこと。
もう1つはーーーーーー
「『らしく』無くなるのは…怖いですか?」
「…」
「どんな三蔵でも…
真明には『江流』だと思いますよ」
「俺が…『真生』じゃ無くなるんだよ」
「そこまで分かっていれば安心です」
ニッコリと三蔵に向かって笑う。
「…どーゆー意味だお前」
「アハハ。
さる有名な方のお言葉を借りるなら…」
慣れた手つきでお茶を入れ三蔵の前に差し出す。
「『恋とは自分で自分の言っていることがわからないってこと。 』」
「…」
「三蔵はその域を越えちゃってます。
一周回って周りや相手が視えすぎて…
今更そこからマトモになろうたって、もう、遅いですよ?」
「人を…キチガイ扱いしやがって…」
クッと可笑しそうに三蔵は煙草を煙を揺らす。
「初めて真明に会った時直に分かりました」
「…」
「ああ、この子は三蔵の大切な『何か』だってね」
「昔…アイツには命を呼び戻された」
「…」
「その時真明の力の『鞘』になろうと思った。
誰が決めたのではなく、俺が決めた事だ」
「だから三蔵は…」
「結果的にはまた呼び戻されたけどな。
今回の事でつくづく思い知らされた」
煙草を消し、椅子から立ち上がる。
八戒が見上げた三蔵には迷いはなかった。
「2人共生きる道を選ぶ。
それ以外お姫様はお気に召さないらしいからな」
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