□ヒミツな2人
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「!!!!」
息もかかりそうな程近い距離に雪華は赤面しっ放しだ。
(本さえ…返してもらえたら…)
こんなにドキドキしなくて済むのに…



バサッ…
『あっ』
妖怪との戦いの中、戦う術を持たない雪華は身を隠す際に本を落としてしまった。
(大切な本が…!)
すぐさま手を伸ばそうとするが、目の前には妖怪の姿…
『…!』
襲いかかる影ーーー自分はここで死んでしまうんだとキュッと目を閉じた。
しかし
響いたのは金属音。
『…』
薄っすらと目を開けてみると、そこには妖怪が倒れていた。
『大丈夫か?雪華チャン』
その向こうには悟浄が立っていた。
『あ、有り難う…』
ワタワタと眼鏡を拾い上げ、本も…
『ん?コレ…』
『あっ、かえ…』
慌てて手を出すと1足遅くスッと悟浄が取りパラパラとめくる。
『ねえ、悟浄!返して…ってば…』
ピョンピョンと手を伸ばして跳ねるが長身の彼に届くわけもなく。
『…ふーん』
ニヤッと見下されて
(うっ…嫌な予感…)
三蔵一行と出会い、旅をする事になってから
何かにつけて雪華にちょっかいを出してきた悟浄。
『拾いもんにはお礼1割…ってな』
『うっ…何をすれば…』
『そーだな…』
眼鏡を外され顔を覗きこまれて
企んでる目ーーーー

『じゃあ満足するまで言う事聞いて貰っちゃおうかな』


(いつになったら返してくれるんだろ…)
「…」
溜息をついた雪華の姿をミラー越しに八戒が心配そうに見つめていた。







「雪華、少しよろしいですか?」
「…はい」
野宿の為の用意をしている雪華に八戒が声をかける。
「どうぞ」
「有り難うございます」
温かいミルクを受け取りそっと口をつける。
甘い香りが広がった。
「…美味しい」
「でしょう?真明がハチミツを入れてくれたんですよ」
「真明さんが…」
思わず顔が綻ぶ。
その様子を見守り八戒は再び話し出す。
「悟浄と何かありましたか?」
「!」
「アハハ、雪華は正直ですねえ」
「八戒さん…」
困ったように眉を下げる姿がまた肯定しているようなモンで。
「どうしましたか?」
「あの…」
「あ、本を取られたとか?」
「…」
「え?図星ですか?」
「実は…」
雪華は今迄の経緯をポツリポツリと話し始めた。




話を全て聞き終わって
「…」
今度は八戒が黙って何かを考えている。
「あの…八戒さん?」
「ああ、スイマセン。
雪華にとって大切な本ですもんね…」
「そうですね…祖母と伯母が亡くなってからは毎日眺めて…」
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