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□なんていうか、よくあることだよ
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「大好きだよ」
そう言えば息を飲む彼女がいとおしいのなんのって!その言葉は別に嘘でも偽りでもないんだけど、まぁどちらかと言えば嘘になるかもしれない。俺が好きなのは俺の言葉で狼狽える彼女であって、彼女の全てではないのだから。
「あいしてる、かすが」
金の髪を掬って口付ける。息を飲む音が聞こえて顔を上げたら、彼女は今にも泣きそうな顔で俺を見ていた。それが凄く不愉快で、そんな顔を見ていたくなくて、髪を引っ張って無理矢理口付けた。
「…やめ、ろっ」
ドン。と強い力で押されて離れる。押し込もうとした舌は噛まれて血が出ていた。多少痛いが、まぁ大丈夫じゃないかな。
かすがを見ると、彼女は必死で唇を擦っていた。そう、まるで、感触を消すかのように。
その様子がやけに愉快で、かすがの細い体を引き寄せて抱きしめる。必死で抵抗してるみたいだけど、この俺に勝てるなんてほんのちょっとでも思ってんのかな、この子は。
「だいすきだよ、」
「やめろ!馬鹿!」
「あいしてる」
「嫌だ…離せっ…!」
抵抗されても、その拍子に引っ掛かれても、全然痛くない。寧ろ愉快さが増していく。
「…心なんてないくせに!」
既に涙が浮かんでいるかすがを見て、笑みが浮かぶのが自分でもわかった。
なんていうか、よくあることだよ
(可愛いものほど虐めたいって、言うじゃん)
#090306