♪♪
□出会わなければよかったの
1ページ/1ページ
「……まだ会ったりしてんの?」
声が出なかった。アスマと紅さんの式に出たけど、それでも好きで、好きで。カカシはそんなあたしに聞いてきた。カカシの顔も見れなくて、振り返らずに、うん、と頷いた。
「お前だって、わかってんデショ?もう、おしまいだって。あいつも何考えてんのかね?お前の事式に呼ぶなんて。」
「…紅さんに呼ばれたから。アスマは知らなかったと思う……」
ため息つかないでよ、あたしだって、こんなのダメだって、ちゃんとわかってるんだから…
数日後、人づてにアスマと紅さんが旅行から帰って来たと聞いた。
電話、してみようか…声だけでいい、声だけでも聞きたくて。部屋に独りでいると、あなたと過ごした日々が、目について苦しいの。だから、お願い、声だけでも聞かせてほしいの。
受話器を持つ手が震えてる、何度置こうと思っただろう…。紅さんの顔が、頭をちらつくけれど…。
違うんだ、違うのよ。あなたの築いた家庭を壊すなんてそんなつもりはないんだよ。
ただ、好きなだけ。愛してしまっただけ、ただあなたの腕にもう一度抱きしめてもらいたいだけ。叶わないって、分かっているよ。
好きになることを、止められないのに、もうあなたしかいらないのに。
ひどい言葉で罵って、私の中から消えてよ、お願い。
あなたの置いていった煙草は、誰にも吸われずにまだあたしの部屋にあって、煙たいと目に涙をためてたあの頃が懐かしくてたまらない、また笑ってよ。子供だなって頭をなでてて。
初めからわかってた、いつかはこうなるってわかってた。
あなたを知らないあの頃に帰りたい。
出会わなければ、よかったの。
(そんなこと、あたしにはわからないよ…)