♪♪

□総悟E
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屯所暮らしは久しぶりで、また慣れるのに時間がかかったけど。ここにいる方が家にいる何倍も働くのに、疲れを覚えなかった。


私は変わらず一番隊で、隊長の下で働けるのに、今まで私の勤めだった、「起こす係」は、隊の中でもとびきりかわいいと噂の女中のものになっていた。
隊長も、その女中も、まんざらでもない顔をして二人で笑い合っていた。あの人の笑顔を手放したのは私なのに、あの人の言葉を冗談だと突き放したのは私なのに、堪らなくあの子に嫉妬をしているのも私だった……




今更、私がどうこうしたところでもう取り返しの付かないことなんだろう。足早に、その場を去ろうとしたのに、根っこが生えたみたいに私は動けなくなってしまった。

ずるずる、と壁に寄り掛かるように座り込んでしまった私に気付きませんように、と。体は全く言うことを聞かないのにやけにはっきりした頭で、そればかり考えていた。



そして、動かない体をなんとか縮こめて、足を抱きしめるように座っていると眠気がやってきて、その場でそのまま眠ってしまった


「おいっ、起きろ!!こんなとこで寝やがって、知らねーぞ!まったく!」

『ん?ぁ、副長?どうしたんですか?』

「どーしたも、こーしたも、お前ェ…総悟が血相変えて捜してたぞ…」

『隊長…が?』

「早く行って、ツラァ見せてやれ!」

『…でも』





「――土方さん?そこにいるんですかィ?動かねーでくだせェ…今から俺がバズーカ…………!!」

『……隊長…』

「あれ?お邪魔でしたかィ?すみませんねェ、まさかアンタと土方さんがそういう仲とは知らなくて…」

『隊長…!』

「総悟!!いい加減にしろ!なに屁理屈ばっかこねてんだ、お前ェは!」


その時の隊長の目はあまりに冷たくて、背中に寒気が走った。





月だけが黙ってみていた






もう、隊長と一緒に笑う資格なんてないのかな?


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