Short2
□下手くそなラブレター
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毎日のようにかよう薬局。スーパーと併設してあるそれは、買うものがなくたってふらっと寄ってしまい、こまごましたものをちょこちょこ買ってしまう。それはもう、繰り返す毎日に組み込まれたものになっていたはずだったのに…
「298円になりやす。…ありがとうございましたー」
今日はまたリップを買ってしまった。・・・いいの!違うの!これ前から欲しかったの!昨日買った奴とは違うんだってば!
『はぁー…』
(明らかに無駄遣い…)
最近この薬局に入って来た店員。ヤマザキさん。これは胸のプレートで確認済み。
真っ黒い髪の毛に、伸びた前髪と襟足。男のスタッフは全員着るのか?薬剤師みたいなちょっと襟の立った白衣。他の人にときめいたことなんてなかったのにな…。そしてして!あの垂れた目でニコリと笑われた日にゃあ…
「いらっしゃいませー」
片膝ついてトイレットペーパーの仕出しですか?えーと、198円?安ゥゥ! 本日はこれ買います。
12ロール入ったビニールをひとつだけ引っつかんで。だってあんまり側に寄ったら、さっきから体中に大音量で流れてる心臓の音、聞かれちゃいそうなんだもん…。
「ねぇ…!」
ふいに掛けられた声に、ギギギとでもなりそうなあたしの首が回って、彼を、ヤマザキさんを振り返る。
そこにはまだ、片膝ついた彼が!
『・・・はい?』
「いつもいろいろ買ってくれる御礼…。」
そういってメモを渡された。
「家に帰ったら、読んでね」
コクン、と 頷いたあたしに満足したのか。彼はまた笑顔を浮かべて作業を開始した。
まるでロボットになったみたいにぎこちない歩き方。そんなあたしを見て、またヤマザキさんは「ありがとうございました」と、いつもと変わらずに言ってくれた。
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