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□鬼の目にも涙
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スゥ――――ッと、刀の切っ先が私の身体をなぞったとき、ぶるりと震えて、言いようのない痛みが全身を襲いました。


もう「死ぬ」ということを覚悟しないといけないと、おもいます。


肩越しに、私を切った奴の不気味に光る瞳を見たあと、崩れ落ちる奴の後ろに立っていたのは、鬼のような眼をした、沖田隊長でした。



「大丈夫ですかィ?」


赤い瞳はふいに優しくなったけど、急に怖くなって震えが止まらなかった。背中を生暖かい液体が流れているのもわかったし、やっぱりもうじき死ぬんだと思いました。


「こんなのにお前を殺させるくらいなら、俺が殺してあげまさァ」



いやだいやだ、まだ一緒にいたいと、胸の内では叫んでいるのに…






最期に私が映したのは、ひどく優しい眼で、最期に耳に届いたのは、ひどく甘い声で。


細くて暗い路地で、初めて交わしたくちづけが最期のくちづけになってしまったのがあんまりにも口惜しい。







「逝きな」






瞼を降ろすと、私をぎゅうと抱きしめてくれました。背中をもう一度刀が走ったとき、愛しくて愛しくてもう一度だけと、開いた瞳に映し出された隊長の瞳には……









鬼ノ目ニモ涙









ソシテ、私ノ光ハ奪ワレタノデス。世界デ一等、恋シイ貴方ニ…

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