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□幸せな結末
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20代後半にさしかかると、周りはやれ結婚だ、出産だと騒がしくなるもので。しかし、そんなのに縁がなくまあ適度に仕事して、たまに遊んでってそんな風に過ごしてきた私に、10代の頃は男と遊ぶななんて言ってた親がうって変わって今となってはいかず後家にならないかと口うるさい。



「あら、加藤さんちの娘さん婚約?ちょっと、あんたはどうなの?男の一人や二人いるんでしょ?」

「高木さんち、お孫さん遊びに来てたわ〜、うちはいつになるのかしら?」

「○○ちゃん、主人の会社の人なんだけどね、今度お見合いしてみない?」

「仲本のおばちゃん、私お見合いとかちょっと…」

「あら、そう?でも商社マンだしーーーーー…」


まだまだ若いつもりだけど、世間はそうは見てくれない。


頂いた引き出物が余計に重苦しい。久しぶりに履いたピンヒールで足がいたい。今日もブーケ、取れなかったし、友達のバージンロードではやっぱり涙が止まらないし。こんなとき思い出すのが悔しいことに 「○○って男居なくても生きていけそうだもんな」なんて、甲斐性なしの元カレの台詞だ。

うぅ、涙が出るのはまだあいつを好きだからじゃない。踵が靴擦れして痛いだけだもん。



銀時と別れてから、何人かいいなって思う人居たのに、忘れ方を忘れてしまって、あんな酷い事言われたのに、思い出すのは私を上手に甘やかしてくれる彼の事ばっかりで、上手に甘えられない私から男はみんな去ってしまう。

いまさら好きだって言ったってしょうがないのに、あ、間違えた。好きじやないし。


ああ、月がこんなにきれいな夜なのに、悲しくなるのはもう全部こんな靴のせいだ!

近くをスクーターが通りすぎる、バタバタなるエンジンは少し先で止まるから、こっちは少し身構えてしまう。そりゃ、私なんかをどうこうするなんてあり得ないと思うけど、用心するには越したことはない。 何をしてるのかまだ動かないスクーターの横を大回りで避けるように歩くと、声を掛けられた。懐かしい声に思わず歩みを止めてしまった。


「久しぶり、○○ちゃん。」


なんで、こんな時に会っちゃうのよ…


「あれ?銀さんの事忘れちゃったわけ?あんなに愛し合った仲じゃないの」

あのまま歩き続けなかったことを今更悔やんでも仕方ない。

「久しぶり、元気にしてるの?」

「元気、元気。あいつらも相変わらずだしって、お妙には会ってるんだっけ」

「うん、まあね」

「なに、結婚式帰り?いい男いた?」

「ほんとそういうとこ変わんないね」

「そりゃ、変わんねーわ。銀さんだもん」


うん、そうだね、私も相変わらず可愛くない女のまんまだ。

「なに、もう帰んの?寄ってけよ、神楽も喜ぶ」

「銀ちゃん、バームクーヘンはあげないよ。ママが楽しみにしてるんだから」

「…なんだ。バレたか」

「でもいいよ、足がいたいから万事屋まで乗っけてもらう」


ほら、と被ってたヘルメットを押し付けられる。

ちょっと髪セットしてあるんだからって文句を言おうと思ったら存外、優しい目で見てるもんだから、言えず終いだった。


久しぶりに聞いた「しっかりつかまっとけよ」に、こう胸が暖かくなった。
銀時の背中で思わず泣いたのも、きっとさっきからぎゅっと手を握ってくれてるからだ。

「ねえ、片手運転危ないって」

「なんだよ、前もこうしてただろ?おとなしく捕まっときなさい」


***

「へぶっ」

相変わらずの急ブレーキに心配になる。こいつはいい歳してまだ かもしれない運転ができてないのか!

背中にぶつけた鼻を擦りながら、スクーターからおりる。厭らしい顔して笑う銀ちゃんは、「懐かしいな、その顔」という。



「おーい、銀さんのお帰りだぞーバームクーヘンあるぞー」

「ぜったいあげない」


あれ!その声はなんて、居間の引き戸ががらがら開いて新八くんと神楽ちゃんが玄関まで出てきてくれる。

「○○さん!お久しぶりです!姉上から話は聞いてましたがなかなか会えなくて!」

「○○〜!会いたかったアルぅ〜!」

「お前らね、銀さんにおかえりの一言も無いわけ?」

「さあ、上がってください!すぐお茶いれますから!」

「○○〜!」


「おじゃましまーす」




「………。俺なんかした?いじけますよ。」




久しぶりの新八くんの美味しいお茶に引き出物のバームクーヘンをあけると、「おまえ、ママさんいいのかよ」なんて、銀ちゃんは昔から私には気を使わないくせにママにはこうしてたっけ。だから意外にママ受けは良かったのよね、ジトリと睨み上げてしまう。

「な、なんだよ」

「別に〜」

「どこのエリカ様ですかァ!コノヤロー!」
「ちょっとー古すぎて笑えないんですけどお!」

「ところで○○さん。」

新八!話遮んな!って声を無視して新八くんは続けた。


「姉上から聞いたんですけど、お見合いどうだったんですか?たしか、なんかどっか商社の…。」

「あぁ、長介さんね。」

「○○、付き合ってる男いるアルか!?」

「ちょっと神楽ちゃん、唾とばさないでよ」

「あはは、長介さんはーー」

「なあんだ、○○ちゃんイイ人いるならこんな夜中に男んち上がりこんじゃダメでしょーが!」

「ほらほら、もう帰らなくちゃ!新八、送ってやれよ。銀さんこれから用事あんだわ」


「何よ、急に」

「急じゃねえよ。もういい時間だろ?定春に乗ってけよ、そしたら足も痛くねえだろ?」

「馬鹿ですか、アンタは」

「そうアル!いつまで経っても馬鹿のまんまアル!」

「あんたらいつまでそうやって意地張ってるつもりですか!銀さんも○○さんの話最後まで聞けよ!この、弱虫!」

「なッ!」

「○○さんもこんな男いい加減やめてほんとに長介さんとこ行った方がいいですよ!」

「新八くん…」

「もう見てられませんよ、そんなふたり!ーー…神楽ちゃん、今日はうち行こう!定春もおいで」

「ちょ、おいっ!」



なんだこの急展開は…。


「なによ」

ジト目で見てくる銀さんは、お前のせいだと言う。


私が、彼氏と長続きしないのも、そのせいで余計に重くなっていく殻も、しょうがなくお見合いしたのも、全部ぜんぶ、誰のせいだと思ってんだろう?コノヤローは。

「だって、強がらないと生きてけないよ。銀ちゃんが言ったんじゃない!」



「俺がなに言ったってのよ」


「私は男居なくても生きていけそうだって。…私は傷つかないと思った?」

「そりゃ、おまえアレだろ?!銀さんの精一杯の強がりというか口任せに…」


モゴモゴ話続ける銀ちゃんに、ぐしぐしと涙を拭きながら続けた。


「私ずっと心配だった。お妙ちゃんから、銀さん吉原解放してなんか強い人と戦って包帯ぐるぐる巻きだって聞いたときも、溝鼠組とすごい大喧嘩したとか、お登勢さんの事だって。大丈夫なのかな?ってずっと心配だった。」

「んじゃア、顔見せに来いよ。俺だってな!」

「だって私が銀時と別れたのはさ、銀時がみんなに優しいからだよ。それが銀ちゃんの良いところで私が好きになったのだってそういうところなのに、銀ちゃんは、みんなに優しいから、みんなをかっこよく守っちゃうからだからみんな好きになっちゃうんだからね」

「なあぁに言ってくれちゃってんの?俺ァ今も昔もお前だけだっつーの!別れたとかさ、俺そう思ってなかったからね!なんか○○最近来なくね?って銀さんなんかした?ってそれずっと、今でもそう思ってたからね。別れたとか初耳ですから。長介さんンンン?!どこのいかりやですかァ、コノヤロー!銀さんそんなの絶対許しませんからね!」


ずかずか近寄ってきて、ばふっと、銀ちゃんの腕の中に閉じ込められた。久しぶりの銀ちゃんの匂い。体温。


「嫌われたって思ってたよ、なんであんなこと言ったのよ。普通言わない」


「だから、喧嘩のノリっつーか、それこそ口任せに…俺だってあの頃毎日不安つーか、お前が俺に愛想つかしていなくなっちまうとか思ってたから、」


それじゃふたりはお互いを想いすぎてすれ違ってたとでもいうの?

「私たち、ばかだね。それじゃ銀ちゃんは、今でも私のこと」

「好きですけど?」



クスクス笑いが込み上げて、ぎゅうっと銀ちゃんの腰に腕をまわして抱きついた。


バツの悪そうな顔をして、下唇を尖らせて銀ちゃんは、

「俺が一緒になりてーのは、○○だけだから。」


とにかく今夜は帰さねーから。

低くて甘い声に、素直に頷いた。



20代後半にさしかかると、周りはやれ結婚だ、出産だと騒がしくなるもので。しかし、そんなのに縁がなくまあ適度に仕事して、たまに遊んでってそんな風に過ごしてきた私に、10代の頃は男と遊ぶななんて言ってた親がうって変わって今となってはいかず後家にならないかと口うるさい。
でも、きっと素直になれた私たちはこれからずっと一緒にいれるはず。

end.


「あ、用事あるんじゃないの?」

「かっわいくねー女!可愛くなさすぎて逆に可愛いわ!!!」





ーーー▽▽▽▽

やっぱり最後甘いとうまくまとめられない。途中でもうバカップルか!とか思っちゃうせいか抱き締めさせてちゅうして終わるとかいつものパターンでスミマセン。銀ちゃんと付き合いたいと再確認しました。
2014.01.24 向日葵

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