文章

□ミステイク
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「バカだろ、お前。」


「そんな!ひどいです隊長。これには深いわけが…。」


「ほう、なんだ言ってみろよ?」


「何もそんなに怒らなくても…」



久しぶりに松本の部屋に行くと絶句する光景が。
でもコイツは、どうですか?と言わんばかりに満面の笑顔。


そして「素敵ですよね?」と聞いてくる。
あいにく俺はそこで「ありがとな」なんて可愛く言ってやれる性分じゃない。

そこはコイツも理解していると思ったけどな。
ちょっと理解が足りなかったようだ。

誰が妙な存在感を放つ等身大の自分の像に喜べるか。
そんなの無茶な話だ。

何が楽しくて俺の像なんぞを飾ったかと問いただしてみると、”捨てるなんで出来ないし、あまりにも格好よくて”
なんて意味不明な理由を述べてくれる。

折角リアルに作ってもらったんだからいいじゃないですかとニコニコしながら言ってきた。


「俺はお前の像があったとしても飾らねぇ。」

「えー寂しいですよぉ。飾るだけじゃなく、あんなことやこんなことをしても…」

「誰がするか。バカヤロウ!」


何が楽しくて見慣れた男の像なんて飾っていやがるのか。



「もう!この隊長は小言も言わないくて可愛いのに!!」


「可愛い言うな!だったらその俺だけ眺めろ?暫く休みをくれてやるから、ずっとな。ただその俺は何もしねぇぞ。じゃあ俺は邪魔しないように帰ってやる。」


軽く頭に来ることをいいやがるから俺も応戦。
生身の俺が目の前にいるというのに動きもしない俺の方がいいと抜かすか。
だから少しだけ脅してやる。


「えっ隊長!!ごめんなさいっ!」

「まぁ、それを捨てて来るんだったら許してやってもいい。」

少しだけ優位に立って言うと、渋々だが松本は了承する。
布をかぶせながらせっかくの隊長が…なんて寂しそうに呟くから言ってやった。


「だったら生身の俺を堪能すればいいだろう?」

「…隊長っ!」


さっきまでしゅんとしてた松本の顔が一気に赤らむ。
つくづく可愛い女だと思う。


「ほら、さっさと片付けてこい!嫌っつーほど可愛がってやるからよ。」

「わかりましたよー隊長のバカー!!エロガキっ!」

「よし、明日は特別に非番にしてやるからな。」


一瞬目を見開いて、さらに顔を朱に染めた松本もとは無言で俺の像を抱えると戸を開ける。


「松本、このまま逃げんなよ。」


「…受けて立ちます。」


ピシャっと戸を閉めると松本はドスドスと足音をたて歩いていく。

離れたところで“隊長のバカヤロー”なんて聞こえてきたが気にしない。


戻ってきたらお望み通り、あんなことやこんなことをしてやろう。



END

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