他校×阿部(1)

水分補給、10分休憩。
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あーあーまた見てるよ。


放課後のグラウンド、水分補給にベンチへ戻った泉は、同じくコップ片手にグラウンドの一点を凝視する田島の一人分くらい空けた隣にどっかりと腰を下ろした。


いいかげんうざいんだよ
こいつのこーいう目。


視線の先は、もう確認するまでもなく常に同じ人物。

常識人で面倒見がよくて押しが強くなくて、この年齢にあるまじき清潔感を漂わせた高校球児の鏡的キャプテン花井。


だいたい、髪型からして無くね?


女子の視線気にして櫛持ち歩くようなヤツもいる、このこそばゆいお年頃に坊主って。

いや、無くはないよ?お洒落な坊主が好きな女子はそこそこ居るよ。

けど、こいつのは俗世を捨てちゃってますみたいに見えるんだよな。
野球一直線?
むしろ女は邪魔だ、ていう。

まあ、それも良いよ。
結果的に好都合じゃん。
彼女じゃなくて彼氏が出来たわけだし。

本人達は隠してるつもりらしいけど(特に花井。田島は渋々?)、バレバレだっての。
たまに絡み合ってる視線があつい甘いあつい。

問題は坊主頭じゃなくて清潔感の方だろ。

もう見るからに、エロ雑誌持ってません!えっち興味ありません!て感じの。

きっと抱きしめたらコットンとか石鹸の匂いがして、キスしたらキシリトール味で、汗なんかサラサラしててポカリ味で、アレに至っちゃあ爽やかヨーグルト味とか……おっとセクハラセクハラ。

とにかくおれ嗅覚では、セクシャルな匂いが全然感じ取れねんだけど。

こいつは違うらしい。


さすがツワモノ。
つうかケダモノ?


こういう、すこし距離があるときの田島の目は、もうあからさまに雄剥き出しで。

サバンナの草陰で草食獣との間合いをじりじりと詰めていく、計算高い捕食者っていうか。

熱のこもった静かな視線っていうのは、周りから見る分にうざい。

一度気付いてしまうと、いくら目を逸らしても気になる。
ジャマ。
四畳半の部屋に置かれたバランスボールみたいに目障り。だから、


さっさと堕ちろ、花井。
 
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