他校×阿部(1)
□signal blue
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「慎吾さん、これはー?」
「んー…ああ、それはキッチンに持って行って迅に渡して」
「りお、下降りるならこのゴミ持ってけ」
「…っんだよ、さっきから荷物運びしてんのオレばっかじゃん。ズルくない?」
「うるせー利央。黙って働け」
「食器出し終わったら、俺も手伝うから」
「肉体労働した方が、飯も旨いぞー」
冬の晴れた日曜日。
軽トラをレンタルして、後輩を駆り出し引越し作業中。
駄賃に食い盛りの男三人に奢ったとしても、引越し業者に頼むよりも安く上がる。
大学一年の準太はともかく、今年受験の利央はブツブツと文句を言っていたが、同級の迅が二つ返事で了承したため嫌々手伝ってくれている。
持つべきものは可愛い後輩だな。
この場合、迅のことだけど。
「慎吾さん、配線どうすんスかー?」
「後で一人でやるから、コード届きそうなとこに置いといて」
「っす」
準太は元エースっていうのもあって、可愛い呼ばわりは憚られる貫禄がある。
「食器とか調理器具とか…一人暮らしなのに、たくさんありますね。慎吾さんって意外に自炊する方なんスか?」
「当然。今日食べたものが、明日の自分を創るんだ。食は大事だぞ」
「慎吾さん、鉄板焼きとか行ったら仕切りますもんね」
そういや、準太が大学合格したとき、和己に声かけられて何人かで鉄板焼きに行ったな。
シメに華麗に薄焼き卵作ったら、こいつ呆れてたっけ。
「迅、後学の為に教えておいてやる。女の子連れていくなら鉄板焼きだ。向かいに座らせて彼女の分まで焼いてやると、指先が器用そうに見えてその気「迅にそういうこと言うの止めてくださいいやらしんごさん」
お年頃の可愛い後輩のためにレクチャーしようとしたのに、準太に邪魔された。
だいたい、いやらしんごさんって何だ。俺は普通だって。普通。
「…も……もうダメ…」
ゼェゼェと息を切らして利央が運び入れた特大段ボールの上に突っ伏す。
おー…よく一人で運んだな…二人で運ぼうと思ってたヤツなんだけど。
「じゃあ、利央が潰れたところでメシ行くか?」
「えー!? 引越しの昼飯って寿司と蕎麦とデリピザじゃないのォ!?」
すっごい楽しみにしてたに!! なんて喚いてるあたり、まだ全然余力あるじゃん。もう1ターン働かせるか?