他校×阿部(1)

all green!
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いつか欲しがっていた言葉は、ある日突然頭上から降ってきた。


「実は、恋人になってほしいんだけど」


まるで垂直に上がったキャッチフライ。
取り落とす方が難しくてすんなりミットに収まった。

もしかして、
これも作戦?





all green!





受験勉強の息抜きに、なんて心にもない誘い文句で隆也を連れ出して、借り物の車で最寄りの海岸に着いたのは3時過ぎ。

料金高めの駐車場に停車して車外に出ると、12月の海風が肌を刺した。


「寒い?」

「寒い」


ここで「大丈夫」と言わないところが隆也らしい。
隆也は持ってきていたマフラーをグルグルに巻いて、軽く足踏みした。

受験生に風邪ひかせちゃいけないのは承知なんだけど、隆也の高校生最後の冬に、どうしてもやっておきたかったんだ。

イヴに二人きりで海。

……ベタだとか乙女かよとかどんな感傷だよとかそういうことは車の中で隆也に散々罵られた。

それでも、二年前は部活優先の隆也のために遠出なんて出来なかったし、ようやくジャマ(野球)が入らなくなった今、ベタなデートコース制覇してみたくなっても良いと思う。

本当は毎日でも引っ張り回したいのを、これでも我慢しているんだ。
大事な受験だからね。

駐車場から少し歩いて、車道を一本横断すれば海岸に出る。

海風にブルリと身を震わせた隆也を後ろから包み込み、見上げてくる顎を掌で支えて唇を落とす。

懐かしいけれど昔とは違う恋人のキスに、冷たい潮風が心地良いくらい熱くなった。

隆也の唇も舌も、同じくらいに熱いのが嬉しい。

同じくらいに……

あれ?

熱…


「…っ……や…っっ!!」


腕の中で身体を反転させた隆也は、両腕を突っ張ってキスを振り解いた。


「……っ無理」


俯いて呟いた顔は、今まで見たことがないほどに赤い。

俺の視線を避けるように砂浜にしゃがみ込んで頭を抱えた隆也は、次に信じられないような言葉を発した。
 
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