他校×阿部(1)
□Santa claus is…
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※阿部が大学生。
一緒に暮らし始めて、一度目のクリスマス。
…と言っても、ほんの二週間前が自分の誕生日だったから、胸焼けするという理由で用意したのはショートケーキが2個。安物のシャンパン一本。スープとサラダと飯。後は島崎が予約していたチキンを受け取って来ればおわり。
Santa claus is…
去年は受験生だったのに、島崎の乙女趣味に付き合って凍えそうに寒い海に行ったりしたが……オレも大学生になった今、お互いに時間の融通が利いてクリスマス前に目ぼしいデートスポットは制覇した。
おかげで今年はぬくぬくと家に居られる。
簡単に掃除して島崎の帰りを待つ間、ふと二年前を思い出す。
二年前の島崎と同じ歳になって、なんとなく…あの時焦って同居を持ちかけてきた気持ちがわかった。
高校の頃は授業に部活に、忙しすぎて目先の事を考えるので精一杯だったのに、大学生になると…暇ではないが、予定を自分で組める分、何となく気持ちに余裕が出来たり、外的要因でいきなり空き時間が出来たりする。
そうすると特に急ぐ必要のない案件について考えてしまったり、意識して何も考えないようにすると自然に島崎のことを思い出してたり……オレが野球に集中してた半年の間、会わなかった島崎の不安とか焦りとか……今頃になって、本当に理解できた気がする。
まあ、それも仕方がない。
だって当時のオレは野球で手一杯で、島崎の気持ちなんか想像しようともしなかった。
二年前のクリスマスの頃なんか……
過去の自分を思い出して軽く滅入っていると、オートロックからの呼び出しが鳴った。
「はい」
どうせ島崎だろうと思って取ったインターフォンからは、意外なヤツの声が聞こえてきて、
「……泉?」
余りのタイミングの悪さに眩暈がした。