他校×阿部(2)
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『次は○○小学校』
駅の掲示板で、その癖のある文字を見付けて、島崎は深々と溜息を吐いた。
「次は○○小かぁ。結構移動距離あるねー」
「まあ、これくらいしないと仕返しにならないんじゃないですか?」
のんびりと感想を述べた山ノ井に、事の成り行きを知っている準太が応じる。
ここまで見ないように気にしないようにしていた島崎は、とうとう振り返って二人をじっとりと睨んだ。
「つーか、なんで付いてくんの二人とも。暇な山ちゃんはともかく、ウチのエースがなに部活さぼってんの。来年も一回戦負けする気かよ」
「うっわ、慎吾ったらみっともないー。彼女と上手くいかないからって後輩に八つ当たりですかー?」
「誰が彼女だ」
「え、だって慎吾さんが彼氏のほうでしょ?ベッドの中d「変なトコじろじろ見ながらゆーな」
「でも仕返しでこれだけ振り回されるって、慎吾どんなオイタしたの」
「それがですねー聞いて下さいよ山さん」
「言 い ふ ら す な」
掻い摘んで話すと、こんな感じである。
対戦校の1年と付き合っている島崎は、合意の上でやることはやっていたが、告白も言葉にしての意思確認もしていなかった。
ふと、相手の自分に対しての認識が心配になった島崎は、情事後という何とも微妙なタイミングで告白してしまう。
すっかり機嫌を損ねた相手からは返事が貰えず、そんなとき街で彼とバッテリーを組む投手を捕獲し、人質として相手を誘き出すのだった(詳しくはtreasure hunt参照)
「うーん、それはサイテー」
「ですよねー」
「……山ちゃんそのまま信じないで。それ半分くらい悪意のある捏造だから。友達であるオレを信じようよ」
「友達だから信じないんだろ?」
「半分は認めちゃいましたしね」
友人や後輩からの自分の評価を再認識した島崎は、突っ込むのにも疲れて黒板に向き直った。
そこには次の行き先を示す一言しか書いてなくて、メッセージらしきものは何も無い。
最初のメールは多分、移動にかかる所要時間から逆算して送ってきたはずだから、次あたりがゴールで練習が終わった隆也も○○小に向かっているだろう。
あの隆也に限って、ただ悪戯に振り回してゴールで直接返事なんてそんなはずない。
何かあるはずなんだ、何か……