他校×阿部(2)
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試合が終わった後通用口で、その姿を目にしたらつい、方向転換してしまっていた。
「ッ…隆也さん!!」
先を歩いていたチームメイトの向こうから遠慮のない大声。
「誰? 隆也さん?」
「隆也さーん! 呼んでますよー!」
「あの……阿部くん?」
「……っ」
反射的にUターンしていた身体を渋々元に戻す。
ソイツがズカズカと大股で近付いてくると同時に左右に割れた部員達は、一瞥して知り合いらしいと認識すると足を止める事無く前に進んでいった。
外野を気にせず直進してきたソイツは、正面まで来てピタリと止まる。
球場では遠目で解らなかったけど、こいつ…
オレをまじまじと見る目線が昔より高い。ちょっと…いや、かなり
「……隆也さん、縮みm」
「人間が縮むわけあるかバカ!!」
かなり高い位置にある頭を叩くのは悔しかったから、持ってたエナメルを横ケツにぶつけた。
「〜〜〜…っひでえ」
「酷くない。酷ェのはオマエの頭だ」
大袈裟に当たったところを擦りながら、恨めしそうに見上げる。
ガキっぽい表情も、不躾な態度も全然変わらない。変わったのは身長と体重と…声も少し低くなった。
思い起こせば、榛名と組んでいた頃は身体のあちこちに痣が絶えなかった。
速球でノーコンなんてタチ悪い。サインから外れた位置に剛速球が来てみろ。普通なら避けるのがやっとだ。
けど、オレはキャッチでそれなりにプライドもあったから、ムキになって避けずに取ろうとして、何球かに一回は外した。その度に身体に食い込むような硬球には、毎回涙が出た。(意地でも本人には見せなかったけど)