他校×阿部(2)
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幸か不幸か日が経つにつれ受験勉強の量は増えていって、榛名の事を頭の隅に追いやることに成功した。
選んだ進学先に野球部は無く、次年度から新設の予定だと説明を受けた。
今は黄色い雑草に覆われて、土も見えないグラウンドは今のオレに似合っていると思った。
春になって雑草を刈って、土を均してマウンド盛って、野球が出来るようにしたら。
一から、新しく、オレもスタートを切れるだろうか。
年が明けて受験のお守りを沢山貰い、何日か経つとあっけなく受験当日を迎えた。テスト内容もあっけなかった。
落ちるかもなんてハラハラする事もなく、やっぱりあっけなく合格発表の日がきて、さらに数日後シニアの友達から監督に結果報告に行こうと誘われた。断る理由が見つけられなかった。
冬の晴れた日、まだこれから雪が降るのに、春を感じさせる陽気の日に待ち合わせをしてシニアのグラウンドに向かった。
徒歩で近付くほどに聴こえてくる、ボールを打つ音や声に胸がざわつく。
毎日聴いていた音が、こんなにも懐かしく感じるのは初めてだった。
早く、野球がやりたい。
新しいチームで動いているシニアで遊びたいんじゃなくて、ちゃんと自分のチームで、自分の居場所で野球がやりたい。
今度はきっと間違えないから、投手だけに頼りすぎたり変な感情持ち込んで見ないフリしたりしないから、今度こそちゃんと投手に尽くして、そして、
甲子園に行きたい。
久しぶりに会った監督は、もう厳しくしなくていいオレ達に、前よりもにこやかに話してくれたのが淋しかった。
でも最後にくれた『頑張れよ』が、力強く先に押し出されるみたいで嬉しかった。
挨拶を済ませてもう一度グラウンドを見回した時、丁度ブルペンから出てきた榛名と目が合った。
結構距離があったのに、確かに目が合ったと思った。