他校×阿部(2)
□to Love
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だいたい何時も誘うのは俺からばかりで、でもそんな事気にしてもいなかった。今日メールを貰うまでは。
昼頃に届いたメールとその内容が嬉しくて午後の講義中ずっと顔がキモいと罵られ続けたことはバレないように、顔を引き締めたりニヤけたりして部活中は監督に頭を小突かれた。
結構遠慮なくて痛い筈のそのグーの痛みもあまり感じないなんて、オレもそうとう本格的にやられている。
ぶっちゃけ舞い上がってて、なぜ誘われたかなんて考えてもみなかった。
だからいつもの待ち合わせ場所に早めについて、もろ部活帰りのエナメルを肩にかけた彼の姿を通勤ラッシュの人混みの中に見つけた時は、午後の自分の努力もすっかり忘れて緩みきった顔で手を振ってしまったんだ。
「……っ遅れてすみませ、」
「そんな遅れてないよ。お疲れ」
俺の姿を見つけて、小走りで来てくれた阿部は高2。
三年がいない野球部の副主将で、後輩がいきなり増えて忙しい時期だから、何時間でも余裕で待つ構えでいた。
ほんの一年前を思い出せば阿部の負担は解るし、今現在は最下層の大学一年だ。
大学野球を舐めてる訳じゃないけど、高校の頃みたいな一分一秒を惜しんで練習に明け暮れるほどの切羽詰った感じはない。
その貴重な時間を割いてくれたのがまた嬉しくて、ニヤけかけた口元を片手で隠す。
「何が食べたいですか? 奢りますよ」
「俺は食えるなら何でもいーよ。つか、何で奢り?」
「あー……結構考えたんですけど、気が利いたもの思いつかなくて……プレゼント」
気まずそうに視線を落として、らしくなくぼそぼそと喋る阿部の言葉は、ちゃんと聞こえてはいたが意味が解らなくて「……は?」って聞き返した。
「プレゼントですよ。誕生日の」
「誕生日?……あ、」
はっきり言われるまで、すっかり忘れていた。
今日は誕生日だ。自分の。
「忘れてた」
「そうみたいですね」
「教えたっけ?」
「前にエロの日って言ってたじゃないですか」
確かに、そんなバカっぽい事を言った記憶がある。
ていうことは今日で、
「三歳差か……」
「どんどん大人になっちゃいますね」