他校×阿部(2)
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弱ってる時に奇襲かけられて、醜態曝け出してから数日が過ぎた。
あのまま会う事もないだろうと思っていた榛名からは、何故か頻繁にメールが届くようになった。
その内容は、ランニング中に可愛い犬見かけたとか、腹減ったとか、授業だりぃとか、明日の持っていくものリストとか、メモ帳代わりに使っているとしか思えないものばかりで、それが一日に何通も送られてくる。
立派な迷惑メールだと思う。
返信のしようがない内容だから、勿論返信していない。
やめろとも言ってない。
携帯のフォルダを埋めていく名前を見ながら、着否しない自分の甘さに失笑した。
いきなり家に押しかけてきた榛名は、バッテリーを組んでいた頃と何も変わらないように見えた。
実際変わってない。
アホなメールも、子供っぽい仕返しも、変なところで熱くなるとこなんかも昔と変わらない。
大きくなったのは見た目だけで、こんなメール送ってくるあたりまだ躾の効果が残ってんのかと笑いそうになるくらいだ。
オレが変な感情持ち込みさえしなければ、榛名とはただのシニアの先輩と後輩で居られる。
メールや、たまの電話で全く触れないあたり、冬のアレは悪ふざけが度を過ぎたくらいに思ってるようだし、有耶無耶に出来るならオレだってその方がいい。
そんな都合の良い言い訳を並べて、何度か榛名と会うようになってから数週間。
秋丸という榛名の幼馴染に会ったのは、全くの偶然だった。
礼儀正しい挨拶の後、榛名と同学年でキャッチだと名乗った秋丸は、「阿部さんのことは榛名から聞いてます!」と何故か両手を掴んできた。ニコニコと人の良さそうな笑顔はどこか水谷を連想させる。
オレからは何も訊ねてないのに、ほぼ一方的に榛名の話を続けたところも、水谷を思い出す一因になった。
榛名の機嫌がいい、と秋丸は言った。
ああ、知ってる。
毎日届くメールに、不機嫌になるような要素は何もない。
最近球のコントロールも良くなった気がする、とも言った。
いや、そりゃ言っちゃ駄目だろ。
同じ地区の他校のキャッチに。