西浦×阿部(2)
□Garden
1ページ/2ページ
ガムテープを30センチくらい伸ばして切った。
鋏がなくても真直ぐ切れるガムテープは丈夫で、補強には使いやすい。
最近の気温差で傷んだ的にぺたりと張る。
昔より使わなくなった庭の的は、使ってた頃より傷むのが早い気がした。
「やっぱ勉強してねーし」
突然後ろから聞こえてきた声に、驚きすぎて池に落ちそうになる。
「あっ、あべ くん!」
「お疲れ」
そう言って阿部くんがほっぺたにくっつけてきたのは、ほかほかの紙袋。
「肉まんっ!!?」
「ピザまんも買ってきた」
テスト期間中、ちょっとだけ投げようとして的が傷んでたから補習してたんだけど、笑った阿部くんはあんまり怒ってないっぽい。
「ちょ、ヨダレ……テンション上がってくれるのは嬉しいんだけどさ」
「あ、ごめ、あべくん なに、」
「あー…うん。実はオレもちょっと身体動かしたくて、三橋に付き合って貰おうと思ったんだけど…」
「うおっ!」
阿部くんは紙袋からお手拭を取り出して、オレが手を綺麗にしたら肉まんを渡してくれた。
まだ寒い外で白い湯気を上げる肉まんはうまそうで、立ったままかぶりつく。
「あつっ!」
「慌てんな」
オレが肉まんに集中してる間、阿部くんは的を見ていて、補習した部分に触れるとクスって笑った。
「まだ一年も経ってないのに、懐かしいよな」
その横顔から、阿部くんが思い出している事が何となくわかった。
去年の誕生日だ。
あの夜、みんなの前で的当てやって、甲子園に行こうって言った。
忘れてたワケじゃないけど、思い出した。
夏大が終わったあと、オレは田島君に唆されたんじゃない。
あの日から、オレの目標はそこにあった。
阿部くんが甲子園に行けるって言ったから。
「……全部、阿部くん だ」
目標も、今のオレがこうしていられるのも、全部。
前みたいに依存とかじゃなくて、ちゃんと気持ちを伝えたいのに、前と同じ言葉しか出てこない。
またオマエは、って言われるかなって思いながら阿部くんを見ると、ちょっと驚いた顔をしていたけどすぐに笑って、「全部じゃねぇよ」って言った。
「チームメイトとか、監督とか、両親とか友達とか…建前じゃなくてさ、ほんと助けられたなって思う」