西浦×阿部(1)
□white flags
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最近俺はハブかれている。
先に言っておくが、気のせいじゃない。
気のせいだと思いたくて自分なりに積極的に輪に入ろうと試みたが、全て失敗に終わった。
「じゃーなー、はないー!」
「…………おう」
輪に入れて貰えないだけで、シカトされてはいないんだが。
今日の昼休みも、通路に迎えに来た栄口と連れ立って、水谷と阿部が昼飯を食いに行く。
……そりゃあ、女子じゃないんだから昼飯一人で食べるのが辛いとか、そんなんじゃねーよ。
けど、授業中たまに水谷と阿部が筆談やり取りしてたりとか、休み時間に他のクラスの野球部の連中が来て話していくのに一切入れて貰えなかったりするのが一週間も続くと、さすがに半端ないストレスを感じる。
キュウ…と、縮まった胃に無理に弁当を詰め込んだ。
午後は部活だ。
昼飯抜いたりしたら、マジ倒れる。
美味いはずの卵焼きをモソモソと咀嚼しながら、少し離れた空席を見た。
近頃は胸も痛い。
昼休みが終わる10分くらい前に戻ってきた二人は一緒に教室まで付いて来た栄口と、まだ何か話している。
なんかバカ言った水谷に阿部が辛辣に突っ込んで情けない顔をしてる水谷を栄口が慰めている。
声が聞こえなくても、だいたい分かるやり取り。
ほんの数メートルの距離がホームベースから外野スタンドほどに感じられて、淋しいを通り越して腹が立ってきた。
原因には一切心当たりはない。
それでなんで飯が美味くなかったり、睡眠不足で頭がグラグラしてたり、胸が苦しくなったりしなきゃなんねぇの。
いっそ、ハッキリさせよう。
何でハブかれてんのか、納得のいく理由聞かせて貰おうじゃねーか。
覚悟を決めて席を立つのと同時に、教室の後ろのドアから田島が入ってきた。
「あーべー!」
俺には目もくれず、真っ直ぐに三人の机に向かっていく。
阿部の背後から近付く形になった田島は、ごく自然に阿部の肩に片手をかけ、三人で囲んでいる机を覗き込んだ。
寝不足で目眩がする。
胃がシクシクと痛い。
胸が重苦しい…!!