西浦×阿部(1)

Still in Love
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「今日、これから天体観望会のボランティアとか付き合えるやつー」


日暮と共に終わった部活で、充分疲れているだろう部員に向かって募集する。
全員が着替えていた手を止めて少し考える様子を見せたが、結局オレに倣って手を挙げたのは阿部だけだった。

なんで阿部?





Still in Love





「じゃーなっ。泉、阿部ー」

「おー」

「じゃーな」


部活の連中と別れると、途端に静かになる。
だいたい何だこの組み合わせ。バランスわりぃ。
お互いクラスでは突っ込む方だから、ボケが一人でも居ないと間が持たねんだよ。
そねへん察して参加してくれるヤツの一人も居ないなんざ、使えねぇ。


「泉」


もはや阿部と会話を盛り上げる努力も放棄して、その場に居ない連中を頭の中で罵っていたら、並んでチャリを押していた阿部の方から話し掛けてきた。


「なに」

「オレ、望遠鏡とか扱った事ないけど、平気?」

「へーき、へーき。ガキ共が触って焦点ズレねぇように気をつけて、後は聞いたまんま説明しとけば。解んねぇこと聞かれたり、焦点ズレたりしたら、そのへんの星オタ…ボランティアの人呼べばいーから」

「泉は出来ねェの?」

「ムリ。つか、興味なし。人手が足りねーときに兄貴に駆り出されるだけだから。いやいや手伝ってる感じ。…阿部は?」

「ん?」

「好きなの? 星」

「好き…つーか、そんな知識とかはねェけど、普通に綺麗じゃね? 星」

「あー…だな。オレも望遠鏡で土星の輪っか見たときは、ちょっと感動した」

「えっ!? そんなモン見れんのか!?」

「…見れんだろ。望遠鏡なんだから」

「ソレ用の施設でないと見れないと思ってた」

「今の季節どうかしんねーけど、春ごろ見たときは輪っかが水平になってて、串刺し団子みたくなってたな」

「へー…」

お、なんかこいつ、ワクワクしてねぇ?
意外に話続いたし。
その後も雑談持ち掛けたら普通に話せたし、阿部ってもしかして野球離れたら普通なヤツ?
というか、野球に関してのみ神経質過ぎるのかも。

あー、そんな感じ。
お互い、田島とか三橋とか水谷とか居ない方が素でいられるっていうか、ボケが居なくて逆に楽っていうか、肩の力抜けた阿部なんて初めて見る。
 

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