西浦×阿部(1)


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オレは泉が苦手だった。

部活では必要最低限のコミュニケーションは図れるし、特に支障はなかったが、9組の連中と絡んでる泉を見ていると、かなり遠慮容赦なく自由に見えるのに、それで自然に溶け込んでて、誰とでも上手くやっていて、勉強もそこそこ出来て、野球も人並み以上に熟す(打たせて良し、守らせて良し)。
そんな泉が苦手だった。

器用と言うなら花井や水谷も同じだが、泉は何故かオレの劣等感を煽った。

好きと嫌い、得意と苦手が極端なオレは、マイナス部分を無理矢理引き上げてなんとか表面を繕っている。

それでも感情は上手く抑制できなくて、怒鳴って泣かれたり、嫌われたり避けられたり。

意識していても上手く出来ないオレと、自然に上手くやれる泉。

あのとき手を上げたのは多分、星に興味があったからじゃなくて、泉と話してみたかったから。





Still in Love 4





「もう、こういうのやめよう」


最中もずっと考えていたから、その言葉はすんなりと口をついて出た。
泉は一拍置いて、


「…わかった」


って言って服を着ると部屋を出た。
多分いつもと同じに飲み物調達に行ったんだと思う。

機嫌の分からない棒読みな返事だったけど、表情を確かめようとは思わなかった。なんとなく顔は見れなかった。

いつもと同じように服を着て、そんなに待つことなく飲み物を持った泉が戻る。

今日は麦茶で、その一杯を飲んでいる間、すこし前までエロいことしてたのなんて微塵も感じないような雑談をして、すっかり友達モードで別れる。

いつもと同じ。
次がないだけ。

ただ、玄関で別れるとき最後に見た泉の、らしくない大人びた笑顔が、家に帰り着くまでずっと頭から離れなかった。
 

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