西浦×阿部(1)

すてきな片思い
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毎日。

昼飯時になると阿部は教室から追い出される。

何故なら、阿部が教室で昼飯を食おうとすると、7組の人間が非常にいたたまれない気持ちになるからだ。

今日も今日で授業が終わり、弁当を片手に立ち上がった阿部を目指して、パタパタと廊下を小走りで駆けてくる人物が一人。


「あべ くんっ!」


ガラリと教室後方の引き戸を開けて、三橋は一直線に阿部の元へ来た。


「三橋」

「今日は、天気が良い から、外で食べ ようって、皆がっ」

「ああ、そう。…つか、知らせに来てくんなくてもいーよ。どうせ9組の前通るんだし」

「知らせ…じゃなくて、迎え に、来たんだ よ。だって阿部くんは、オレの だからっ!」


にぱっと全開の笑顔でそう告げる三橋に、7組の空気は一瞬固まり、阿部は呆れたように片眉を上げた。


「…三橋、単語が一個抜けてる。捕手とかバッテリーとか」

「う…うひっ」


嬉しそうに照れ笑いする三橋が、本当に単語を一つ忘れたのか…以前、9組の襲撃を受けていた7組の人間は、とてもそうは思えなかった。
赤い顔で上目使いに阿部を見上げる三橋の照れ笑いの奥に、理解したくもない下心を感じた。


「じゃー行ってくる」

「お、おう」

「がんばってね〜」


メシ食うのに頑張れって何だよ、という突っ込みには曖昧に笑って手を振る水谷と花井に、阿部が送り出されたところで教室のあちこちから溜息が漏れた。

それは、ようやく7組の平和な昼休みが始まる合図のようでもあった。





外で食べる時、決まって9組の4人+阿部が陣取る木陰には、もう残りの3人が座っていた。


「ちす」

「ちーす!」

「あ、あべくん、となり…」

「三橋、配置よく見ろ」


阿部と一緒にくっついたまま座ろうとした三橋に、泉が若干突き放したように突っ込む。

言われて見てみれば、先に来ていた三人は二等辺三角形のような形で座っていた。
底辺が泉と浜田で、頂点が田島だ。
つまり円陣を組んで座ろうとするなら、三橋と阿部は並んで座れない。
両側に空きスペースを持つ田島はニィッと歯を見せて笑う。
本日のジャンケンの勝者だった。

そんな小細工も何も知らない阿部は、ごく自然に田島の左隣、田島と浜田の間に座った。
チラリと斜め下から泉の視線を感じて浜田が怯む。
三橋が渋々と田島と泉の間に腰を降ろして、ようやく田島の「うまそう!」が辺りに響いた。

 
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